退職には、大きく分けて「会社都合退職」「自己都合退職」の2種類があります。
転職を検討中の保育士さんであれば、聞いたことがあるという方も多いことでしょう。
しかし、なかにはこれら2つの違いについて「イマイチよくわからない……」と感じている方もいるのではないでしょうか?
じつは、失業給付金の支給開始日や給付金額の差にもつながる、「会社都合退職」か「自己都合退職」かの違い。
今回はこの2つの退職理由について、その相違点や注意すべき点を詳しく説明していきます。
「会社都合退職」「自己都合退職」とは?
引っ越しや結婚のため、異動で自宅から通うことができなくなるため、療養や介護に専念するため……退職にはさまざまな事情があります。
「会社都合退職」「自己都合退職」とは、それらの退職理由を2つの大きなカテゴリーに分類したものです。
会社都合退職=自分の意志にかかわらず退職すること
「会社都合退職」とは、その名のとおり「会社」、保育園の場合は園や運営母体の都合によって退職を余儀なくされる場合を指します。
倒産や事業縮小に伴う人員整理(リストラ)なとによる解雇のほか、退職勧奨に応じた場合や事業所の移転などで通勤が難しくなった場合、ハラスメントや嫌がらせを受けて退職する場合なども「会社都合退職」となります。
自己都合退職=自ら望んで退職すること
いっぽう、「自己都合退職」とは、自身の事情により、希望して退職する場合を示します。
具体的には転居や結婚、出産、介護、病気療養、キャリアアップのための転職など、多くのケースが自己都合退職として取り扱われます。
なぜ退職理由を分類する必要があるの?

さて、ではなぜ退職理由を「会社都合退職」「自己都合退職」の2つに分ける必要があるのでしょうか。
それには3つの理由があります。
①履歴書の記載内容が異なってくるため
②退職金の支給金額にかかわるため
③失業給付金の支給に違いが生じるため
では、それぞれどのような違いがあるのか、比較してみましょう。
【1】履歴書の記載内容が異なる
まず、退職理由が会社都合か自己都合かによって、転職活動をする際の履歴書の記載内容が変わります。
たとえば、自己都合退職であれば退職理由は「一身上の都合による退職」と記載するだけでよいため、転職回数がそれほど多くなければ、面接で深く追求される可能性も低いでしょう。
しかし会社都合退職の場合には、「会社都合による退職」と明記しなくてはなりません。
もちろん、倒産などやむを得ない事情であれば、採用において不利になる可能性は低いですが、解雇や退職勧奨などの場合には、「勤務態度に問題があったのではないか」「トラブルを起こしたのではないか」「経験年数に見合ったスキルを保有しているのか」などの懸念を生んでしまいかねません。
転職活動では退職の経緯について、細かく確認されることを覚悟しておく必要があるでしょう。
【2】退職金の支給金額にかかわる
退職金制度がある場合には、会社都合退職か自己都合退職かによって、支給される退職金の額に差が出てくる可能性もあります。
職場によって退職金支給規定が異なるため一概には言えませんが、一般的には定年や会社都合退職よりも、自己都合退職のほうが退職金が低くなる傾向にあるため、退職金制度がある場合は確認しておくとよいでしょう。
【3】失業給付金の支給に違いが生じる
退職後、失業給付の受給対象となっており、次の仕事が決まっていない場合には、失業給付金を受けながら転職活動を行うケースも多いもの。
「会社都合退職」か「自己都合退職」かの違いは、この失業給付金を受け取ることのできる時期や期間、金額に大きくかかわってきます。
会社都合退職 | 自己都合退職 | |
---|---|---|
3ヶ月の給付制限 | なし | あり |
最短支給開始日 | 7日後 | 7日+3ヶ月後 |
支給日数(※1) | 90日~330日 | 90日~150日 |
支給金額(※2) | 約18万~275万 | 約18万~125万 |
(※1 障害者等の就職困難者の場合の支給日数は会社都合退職、自己都合退職ともに300日~360日)
(※2 基本手当日額の下限額および上限額で算出)
ただし、特定の条件に当てはまれば、会社都合退職と同じように、給付制限なく失業手当が受け取れるケースもあるよ。
くわしくはのちほど紹介するね!
「会社都合退職」「自己都合退職」という言葉は、いずれも法律で定められているわけではなく、慣例的に使われている用語ではありますが、比較するとこのようにさまざまな違いがあります。
自分の退職が「会社都合」「自己都合」のどちらに当てはまるのか、ということは退職前からしっかりと把握しておく必要があるでしょう。
会社都合退職に当てはまるケース
では、ここからは具体的にどのような場合に「会社都合退職」「自己都合退職」となるのか、チェックしていきましょう。
基本的に「会社都合退職」とは、雇用保険上の「特定受給資格者」(失業給付金が早く・長く受け取れる対象となる人)に当てはまる場合の離職のことを示します。
具体的には、以下のような場合が該当します。
倒産に伴って離職した場合
大量雇用変動(リストラ)によって離職した場合
事業所の廃止によって離職した場合
事業所の移転によって通勤が困難になり離職を余儀なくされた場合(往復通勤時間が4時間以上となるときなど)
解雇によって離職した場合(解雇の理由が自らの責任によらない場合のみ)
入職時の労働契約と、実際の労働条件とに著しい相違があって離職した場合
賃金の未払いが複数回あったために離職した場合(賃金額の3分の1を超える額が、支払期日までに支払われない月が引き続き2か月以上となる/離職前6ヶ月間に3月以上ある場合)
労働者への配慮のない職種転換などが行われた結果、離職した場合
期間の定めのある労働契約の更新で3年以上引き続き雇用されるに至った場合で、労働契約が更新されないこととなり離職した場合
期間の定めのある労働契約の更新で労働契約の更新が明示された場合で、労働契約が更新されないこととなり離職した場合
上司や同僚から故意の排斥・冷遇・嫌がらせを受けて離職した場合(セクハラ・パワハラ等のハラスメントなど)
事業主から退職勧奨を受けて離職した場合(早期退職優遇制度などへの応募による退職は含まない)
事業主の責任による休業が引き続き3ヶ月以上となったために離職した場合
事業所の業務が法令に違反したため離職した場合
自己都合退職に当てはまるケース
雇用保険上の「特定受給資格者」(失業給付金が早く・長く受け取れる対象となる人)に当てはまらない場合の離職については、自己都合退職として扱われます。
ただし自己都合退職でも、特定の理由に該当する場合(雇用保険上の「特定理由離職者」に当てはまる場合)には、会社都合(特定受給資格者)のケースと同じ条件で失業手当金を受け取れるケースもあります。
「特定理由離職者」に当てはまるケース
雇用保険上の「特定理由離職者」に該当する退職には以下のようなケースがあります。
期間の定めのある労働契約が満了し、契約更新がされないことによって離職した場合(契約更新の確約がなく、かつ更新を希望した場合のみ)
体力の不足、心身の障害、疾病、負傷、視力/聴力/触覚の減退などによって離職した場合
妊娠、出産、育児等により離職し、受給期間延長措置(※やむを得ない理由で就職活動をできない場合などに失業給付金の受給期間を延長できる特別措置)を受けた場合
家庭の事情が急変したことにより退職した場合(父や母の死亡、疾病、負傷などにより、父や母を扶養するために離職を余儀なくされた場合/常時看護を必要とする親族の疾病、負傷のため退職を余儀なくされた場合など)
次の理由により通勤が不可能/困難になり離職した場合
特定受給者の条件に当てはまらない企業整備による人員整理などによって、希望退職者の募集に応じた場合など
詳しくはハローワークの窓口などで確認してね!
退職理由選択における注意点とは
さて、ここまで「会社都合退職」「自己都合退職」の違いについて確認してきましたが、じつは、かならずしも事実に則した退職理由が離職票に記載されるとは限りません。
ここからは退職理由の注意点を紹介していきましょう。
「自己都合退職にしてほしい」と言われたら?
本当の退職理由は「会社都合」なのにもかかわらず、職場から「自己都合退職にしてほしい」と頼まれたり、「会社都合退職にすると経歴に傷がついて転職に不利になる」などと、自己都合退職を勧められたりすることがあります。
これには、自己都合退職者が出ることで、事業主が厚生労働省からの助成金を受け取れなくなってしまうという理由があります。
しかし、それはあくまで事業主側の事情。それを配慮して労働者が退職理由を「自己都合退職」にしなくてはならないという決まりはありません。
会社都合で退職を余儀なくされる場合で、離職の理由を「自己都合退職」とすることを打診された場合、望まないのであればきちんと断ったうえで、会社都合である旨をきちんと離職票に表記してもらいましょう。
安易に自己都合退職扱いにすることで、退職後困ることも……
もしも、職場の打診に応じて退職理由を「自己都合退職」としてしまった場合、先に紹介したとおり、失業給付金の支給や退職金の金額などが大きく変わってきます。
あとから「会社都合退職」であることを認めてもらうためには、ハローワークでその証拠となる資料を提示する必要があったり、ハローワークから事業所に確認をしなくてはならなかったりと、手続きには時間も労力もかかります。
「いままでお世話になった職場だから……」「転職に不利になるのは困るから……」と悩んでしまうケースもあるかと思いますが、会社都合退職から自己都合退職への変更を安易に認めてしまうのは危険なことです。
退職後の生活にもかかわるので、くれぐれも慎重に検討するようにしましょう。
便宜上退職届が必要な場合でも、「一身上の都合により」ではなく、「貴社、○○事業所閉鎖のため」「貴社、退職勧奨のため」など、きちんと理由を明記しておくといいよ!
離職票の表記内容が事実と異なる場合は?
一般的に、離職票は退職して10日~2週間程度経ってから発行されるため、なかには「退職前、きちんと会社都合退職であることを確認したのに、離職票の退職理由が自己都合になっている!」というケースもあるでしょう。
その場合には、まずハローワークの窓口で相談してみましょう。異議申し立てのうえ、事業主が記載した離職票の内容が事実と異なることが認められれば、正しい離職理由に修正することができます。
1 証明書類などを持参のうえ、ハローワークに異議申し立てを行う
2 ハローワークが事業主に対し、離職票記載内容の確認を行う
3 誤りがある場合は事業主が修正届などの必要書類を提出する。事業主が誤りがないことを主張する場合には、経緯を記載した理由書を提出する
4 ハローワークが両者の提出書類・資料等を確認し、最終判断を行う
5 記載内容に誤りがあると認められた場合には離職票が修正される
ただし、離職理由を修正するかどうかの判断は、ハローワークが行いますので、かならずしも労働者の主張どおりに離職票が修正されるとは限りません。
会社都合で退職する際には、退職前に離職理由を労働者・事業主双方でしっかり話し合っておくとともに、万一にも離職票の離職理由が事実と異なった場合に備え、退職前に証拠となる資料を残しておくことが大切です。
【まとめ】それぞれの退職理由のメリット・デメリット
ここまで「会社都合退職」と「自己都合退職」、2つの違いと注意点について説明してきました。
最後にそれぞれの退職理由について、労働者にどのようなメリット・デメリットがあるのか、あらためて確認しておきましょう。
「会社都合退職」のメリット・デメリット
「自己都合退職」のメリット・デメリット
編集者より

人生において大きな転機となる「退職」。
頻繁に経験するものではないがゆえに、その手続きにおいてはわからないことも多くあるでしょう。
とくに、はじめての転職の場合などには、退職理由などについて深く考えることなく、職場の求めるまま手続きを進めてしまうケースもあるかもしれません。
しかし、今回お伝えしてきたとおり、退職の理由は退職後の生活を左右しかねない重要なもの。
事前に十分な確認を行ったうえで、自分が納得のできる退職を目指していきたいものですね。
<参考資料>
厚生労働省『特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準』(2020/2/4)
厚生労働省・東京労働局職業安定部『離職された皆様へ』(2020/2/4)
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