子どもにしつけと称して、乱暴をしたり、暴言を浴びせたりする保育士がいます。そのような行き過ぎた指導は不適切保育と呼ばれています。
不適切保育は厚生労働省が2023年に行った調査では、全国の保育所で300件以上ありました。
今回は、子供を預かる立場の保育士が子どもに優しく指導できない理由、その原因について紹介していきます。
不適切保育士の事例
保育士の行き過ぎた指導と言われている、不適切保育の事例を紹介します。
・遊ばせない・世話をしない・大声での指導・人前でひどく叱る・脅しの言葉をかける・叩く真似をして脅す・無理やり食べさせる・細かいことで、過剰に叱る・言うことを聞かせるために叩く |
しつけのために、上記のような指導をする保育園が、富山県の私立認定こども園、静岡県にある認可保育園などで実際に起こっています。
同僚の保育士が上司に上記の虐待行為を報告したが保育園は対応しなかったり、虐待を行った保育士が「しつけのつもりだった」と主張して、園長は「暴行ではない」と判断したそうです。
不適切保育には、心理的な暴力も含まれます。身体に傷を受けた場合と違い、目には見えません。
しかし、保育士自身では軽く言ったつもりの言動でも、子供の心には深く傷つく場合があります。叩かなければ体罰にはなりませんが、不適切保育には該当します。
上司に報告しても保育園が対応しない場合は、児童相談所に連絡しましょう。
保育士の行き過ぎた指導の理由
不適切保育はどんな理由であれ起こってはならないことですが、行き過ぎた指導になってしまう理由はいくつかあります。
原因を知ることで、対策を講じることができるでしょう。
保育園の指導方針
管理者、もしくは先輩保育士の基本的な指導が、行き過ぎた指導方針となっていて、従わざるを得なくなってしまっていることが考えられます。
指導という名の保育をしているので、ダメなことでも当たり前にしてしまい、日常的に不適切保育を行っています。
管理者の責任ではあるのですが、慣れてしまって、常態化してしまうのかもしれません。
職場の人間関係
保育士の仕事は、子どもと関わるだけではありません。
保育園では、同僚や上司となる主任、また園長とコミュニケーションを取り、仕事が進みます。
その中で多くの若い保育士が、人間関係に悩んでいます。
約2年で40.4%が、人間関係を理由に退職しているのです。
保育士2年目の退職理由 |
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職場の人間関係 40.4% |
心身の問題 33.9% |
自分の仕事に自信がなくなった 27.5% |
継続できない職場の雰囲気があった 25.1% |
職場に相談する人がいなければ、保育士を断念する前に第三者に相談をしましょう。
自分にとって働きやすい環境でなければ、自分に合った保育園に行くのも一つの手です。
過大なプレッシャー
保育士は、子どもの命を預かる仕事です。好奇心旺盛で、自分を制御できないような小さな子どもを預かるため、目を離せない緊張感があります。
園児を散歩に連れて行く時、公道には車、自転車、バイクや他の人などが行き交っており危険と隣り合わせです。
青信号で横断歩道を渡っていても、その列に車が突っ込み、事故に合うことも多く見られます。
ケガや事故が起きないよう、常に園児の命を預かる保育士には非常なプレッシャーになります。
スキル不足
保育士の経験不足やスキル不足も原因として考えられます。
保育士のスキルが不足してしまうと、子どもへ行き過ぎた対応をしてしまいます。
スキル不足や経験不足の結果、虐待という間違った方向に向かってしまうのです。
業務内容が多い
保育園で行き過ぎた指導をしてしまうのは、保育士不足による業務負担の多さも原因の一つです。
厚生労働省の資料によると、令和3年における保育士の求人倍率は、2.04倍となっていて、9割を超える都道府県で1倍を超えています。つまり、全国的に保育士不足になっているのです。
早朝から閉園時間まで、子どもと一緒のときは常に動き回り、子どもがいない時間の業務量も多いことから長時間労働になることが多々あります。
そのため、多忙のあまり余裕がなくなりストレスを抱え、子供にあたってしまい、不適切保育につながってしまいます。
出典:厚生労働省「保育所等関連状況取りまとめ(令和4年4月1日)」
行き過ぎた指導の対策
行き過ぎた指導は子どもにとっても保育士にとってもメリットはないので、根本的に対策をする必要があります。
原因の一つに虐待としつけの境目が曖昧になっているということがあります。
しつけと称して子供を暴力で脅したり、相手を傷つける言葉を浴びせたりするのは、子供の人格に悪影響を及ぼします。
また、このことが原因で、子供が心的外傷後ストレス障害(PTSD)になってしまうかもしれません。
ここでは保育士自身に必要な対策を紹介します。
巡回相談をする
巡回相談とは、気になる子を専門家に見てもらい、アドバイスをもらうことです。
具体的には、相談員に相談してもらい、子どもの対応について話すことで、ストレスを下げられます。
ストレスにより出やすい症状はいくつかあり、放置しておくとうつ病になってしまうので注意が必要です。
また、同期の保育士が忙しさでストレスを抱えてイライラしている様子が見られたら、声をかけましょう。ストレスの緩和やコミュニケーション不足の会話にもなります。
虐待についての研修を受ける
いくら自分が気を付けていても、自分の周りで虐待のような行為が行われている可能性があります。保育園の園長や保育園の主任に相談して、行き過ぎた指導を行わないように保育園での虐待についての研修を提案しましょう。
虐待が起こりやすい場面を理解して、保育士同士が連携・協力して、気を配ることが大切です。
そうすれば、園児への虐待を防ぐことも出来るし、自分の子どもが、入園することになったとしても安心できます。
内部告発をする
行き過ぎた指導を目撃して上司や園長に報告したり、通報するのはとても勇気がいります。
しかし、見て見ぬふりをして放置してしまうと、罪になる可能性があります。
その場合、保育士の資格をはく奪される場合もあります。行き過ぎた指導は最悪の場合、子供の命にも大きく影響します。
もし、行き過ぎた指導を目撃した場合は、必ず内部告発を市区町村にしましょう。
管轄となる区役所、市役所へ連絡をして調査をお願いしてみてください。
証拠があれば、すぐに対応してもらえるかもしれないので、勇気を持って連絡してみましょう。
転職をする
保育士の行き過ぎた指導で、児童相談所や市区町村に相談しても職場の雰囲気が変わらない場合は、転職も検討しましょう。
保育士自身が安定していないのであれば、安定した保育はできません。
安心できる転職先を探すのが最善の選択です。
まとめ
保育士の仕事には過大なストレス・プレッシャーがかかります。それでも、子どもに対してあたってしまうことは絶対にあってはなりません。
保育園に通う子どもは自分の気持ちをうまく言葉にして伝えることができません。子どもが口に出さなくても、嫌がっているそぶりなどをしていたら、うまく気持ちを汲み取ってあげることが大切です。
また、人間関係や仕事量の多さなど、解決できること解決できないこと多々ありますが、赤裸々に愚痴を言い合える友人を持つこと、仕事と自分の時間を上手く切り替えていくことが、ストレス解消になると思うので是非、参考にしてみてください。
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