その昔「保母」さんという言葉で定着していた保育業界。世間的には、「保母さん」から「保育士」と、名称は変更されたものの、イメージとしては女性が強かったことでしょう。しかし、現在では、数多くの職業で男女差は徐々に小さくなってきています。保育士も例外なく、男性が活躍する場が増えてきている傾向にあります。
この記事を読めば、実際に「保育士」の男女比がどのようになっているかを詳しく知れるので、是非、最後まで読んでみてください。
男性保育士の割合
厚生労働省は、2020年4月に男女の保育士登録者数についての調査を実施しました。その時、下記のような数値になりました。
- 女性 158万3219人 ― 男性 8万2330人
つまり、女性の保育士が全体の約95%を占め、残りの5%を男性の保育士が占めているということになります。 この調査からさかのぼること5年前の2015年に行われた調査によりますと、全体の登録者数は131万2241人、このうち女性の保育士は125万3223人、かたや男性の保育士は5万9018人でした。比率でいうと、男性保育士は4.5%であったことから、わずかではあっても、男性の保育士は増加傾向にあります。ですが、現在もまだまだ男女の比率には大きな偏りが見られるのも、また事実です。
保育士に女性が多い理由
保育士にこれまで女性が多かった理由には、以下の背景や問題があります。
- 文化的な背景
- 歴史的な背景
- 業務内容の問題
これらについて順番に解説・分析をしていきます。
文化的な背景
元々、日本国内においては、昔から「子育ては女性の仕事」という風潮が根強くありました。現在でも、そのような考えはおおかた大きくは変わってはいないかと思います。
保育士の仕事は、子育てをすることと密接に関わる仕事になっています。そのため、当然、「保育は女性がするべき仕事だ、女性が向いている仕事である」という考え方をする人はがとても多いです。
このような文化的な背景から、「男性が保育士を目指す」という割合は、今でもそれほど多くはなっていない現状が考えられます。
歴史的な背景
保育士の資格は、元来「保母資格」と言われていて、その職業に従事する女性は「保母さん」と呼ばれていました。「母」という字に代表されるように、女性を前提とした名称となっていました。今でも年配の方は、保育士のことを保母さんと呼ぶ方もおられます。もちろん男性の方でも保母(保父)として働いている方は、存在していました。それが保育士という名称に、平成11年(1999年)に行われた男女雇用均等法の改正後に変更されました。「男女は平等に働こう」という趣旨の下、施行されたのが「男女雇用均等法」です。その後、「看護婦」は「看護師」に、航空業界の「スチュワーデス」は「CA(客室乗務員、キャビンアテンダント)」と、名称が変更になりました。このような歴史的な背景からも、女性も男性も「保育は女性の仕事」という印象が根強かったことがあります。
業務内容の問題
保育士の仕事は、0歳から5歳児までの子どもの保育を行う業務になります。その仕事の中には、女性が担当した方がより都合が良いというものがあります。一例としては、乳児の着替えの補助があたります。現在でも、特に自分自身で着替えが出来ない乳児(0〜2歳)の担任業務には、あらぬ疑いや誤解を招くこと避けるという意味でも、特に女児の着替えの担当については、なるべく男性保育士にはあたらせないという考え方を持っている園もあります。
保育士の月給・年収
2019年度の「賃金構造基本統計調査」(厚生労働省)によりますと、保育士全体による全年齢平均の給料(月給)や年収は、以下のようになっています。
これによりますと、平均の月収や年収を比較してみたところでは、男性保育士の方が女性保育士よりも月額にしておよそ2万円、年収にして約30万円弱高い傾向が見られます。一概に単純な比較として断言することはできませんが、全体的には男性の保育士の給与は、女性保育士のそれを上回る様子が見受けられます。この理由としては、上にも記しましたが、「男女雇用機会均等法」とはいえ、同一業務であっても、やはり「性差」は存在するという事例があるからです。
男性保育士の利点
保育園では、保育のお仕事を男性と女性とで役割を分けて行うことによって、数多くの点から、預かっているお子さんの成長を促すことができます。
以下に、男性保育士の役割の例を挙げてみましょう。
- ひとり親の家庭で育つ子どもに対する、父親的な役割
- 元気な子どもたちに対する、遊び相手
- 保育園内の行事で、会場設営をするときに頼られる、力仕事の担当
このように、力を発揮することができるという男性ならではの特性を活かして、男性保育士は、保育の現場で活躍することができます。また、別の面で、女性ばかりの保育園に比べて、男性保育士の存在があるだけで、不審者が近づきにくいという防犯の意味も養うことにも直結していきます。そういう安心材料により、子どもを預ける保護者にとっては、「男性保育士がいる、この保育園に子供を預けてよかった」というメンタル面での保証も得られる、強い「武器」にもなることでしょうね。
男の子のトイレでの支援がしやすい
これまでは女性の保育士だけだったので、男の子がトイレでの行う対応に戸惑っていたことも多かったことでしょう。でも男性保育士の登場により、それぞれの異性、つまり男の子には男性保育士が、そして女の子には女性保育士が担当をすることで、トイレでの支援をしやすくなっていることも、大きな利点のひとつに掲げられています。
おしっこの際にも、男女で体のつくりが違うために、これまでためらいもあったトイレでの支援が、男女の保育士がつくことで大変やりやすくなったという声も出てきています。
男性保護者の相談に乗りやすい
男性の保護者、お父さんやおじいちゃんにとって、男性の保育士は共感しやすい部分が多くあるために、信頼される相談相手になれることが、おおきな利点にもなりますね。
離婚率が多くなっている現代の日本において、父子家庭が以前よりも多くなっている現状があります。また、保育園の送り迎えや参観日の時に、父親が参加してくる場合も、今では珍しくありません。会社でも男性の「育児休暇」を取得させるところが出始めています。そうした時に、男性保護者の中には育児の方法や接し方などについて悩みを抱えている方もおられることでしょう。
悩んでいる男性保護者が気軽に相談できるような、よき話し相手として、男性保育士がなれる、そんな場が今後は多く必要になってきますね。またマスコミにも「カリスマ男性保育士」として、コメンテーターとして活躍されている方も出てきています。今後はそのような男性が「保育の専門家」として、数多くテレビでコメントをする場面も多くなってくることでしょう。
女性保育士の職場での利点
(1)多様な働き方ができる
ほとんど同じ仕事内容で、「正社員」「派遣社員」「パート」と、雇用形態を変えながら働くことが可能です。
また、自分自身の体力や家庭環境の事情によって、自分に合った雇用形態を選択することができます。
就職や転職、復帰、産休育休の取得がしやすい
保育士の仕事は、就職、転職、復帰などがしやすい傾向があります。これらは「保育士不足」という背景から、働きやすさを推奨している面もあるからです。
保育園で働く保育士は女性が多いことから、勤務に対する前例が豊富であることが多いのです。さらに保育士不足で出産を機に辞められてしまうと困るという保育園側の思いもあり、他の職種と比較すると産休育休が取得しやすく、復帰もしやすい傾向があるのです。
男性保育士の将来性
働きやすい環境へと改善していく必要性
男性用の更衣室や男性用のトイレを整備して改修をしているなど、男性保育士が働きやすい環境づくりを推奨している自治体も出てきています。そのような動きが全国的に広げていくことで、今後、男性保育士もその数を増やしていくことができるようになります。また、仕事に就いた後にも、現場で働く保育士が、職場の環境改善を要求していく活動をしていくことで、自分自身や後輩の男性保育士さんのためにも、よりよい環境作りがもとめられていきましょう。
技術の向上を磨く
男性保育士は、自分自身が得意なことを活かして指導をすることができるようにするために、スポーツや音楽など特定の分野に力を入れている園においては、技術の向上が期待できます。また、就職をした後に、幼児のスポーツインストラクターなど民間の資格を取ることで、専門講師として指導することができるようにもなります。結果として、その資格が給与にも反映されて、待遇がよくなることも期待できます。
仕事に対する向上心が芽生えやすい
男性保育士は、結婚後でも生涯の仕事として働き続けることができます。仕事のなりわいには男女の比はないとはいえ、一般に女性の場合には、出産や子育てで休業を余儀なくされる場合と機会が数多くなります。それと比べますと、女性の保育士よりは勤続年数を長く取り、長期の経験を積むことがしやすくなり、結果としては主任や園長といった管理職の立場を、より早く目指すこともできるでしょう。
まとめ
これまで「保育士」における「男女比」、そしてそれにまつわる「男性保育士」の利点や将来性について、色々な角度から調べてみました。この裏返しの観点が「女性保育士」になるのですが、これまで女性が優位の立場であった職業である「保育士」も、上記のような分析と将来性を見つめていくだけでも、男性にとっても魅力のある職業の一つとして数え上げることができるようになるでしょう。ここに掲げた「保育士」はもちろんですが、他にも航空業界の「CA」にも男性の進出が数多くなっています。中には、元警察官の「CA」まで、現在は存在しています。この場合は、まさに飛行機内で何かトラブルが起こった時でも、男性CAはさっそうとした活躍ができることでしょう。
逆に、これまでは男性が優位であった職業である「パイロット」「大学教授」「医師」「議員」などに、女性の進出が顕著になってきています。これらの職業には、仕事に就く以前の「学歴(学習歴)」も関わってくるために、事前のしっかりとした準備も必要になってきます。「職業には貴賤の別がない」のと同じように「職業には男女の差がない」というのも現代の風潮です。これらを肝に銘じながら、「保育業界」にも明るい未来が待っていることを信じていきましょう。
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