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【保育園での歯磨き指導】スムーズに進めるコツや注意するポイント

口の中を衛生的に保つ歯磨きは、幼児のうちにきちんと身につけさせたい生活習慣です。子どもの生活の場である保育園でも、毎日の保育の中で歯磨きを教えます。この記事では、保育園での歯磨き指導の進め方や歯磨きをしたがらない子どもへの対応を説明します。

子どもが楽しみながら歯磨きを習慣づけていけるよう、丁寧にサポートしていきましょう。

保育園で歯磨き指導を始める時期

保育園ではいつごろから歯磨きに取り組めばよいのでしょうか。歯磨き指導をスタートする時期を説明します。

3歳児クラスで始める場合が多い

園の方針によって、歯磨き指導のスタート時期はさまざまです。3歳ごろに乳歯が生えそろう子どもが多いため、開始時期としてよく設定されるのは3歳児クラスです。2歳児クラス後半から、清潔習慣の一環として進める園もあります。

3歳児は着脱や排泄などの生活習慣の自立が進む年齢なので、歯磨きも自分でできるように教えます。なんでも自分でやりたがる3歳児は、歯磨きを身につけさせるのに適していると言えるでしょう。

歯磨き指導に向けて0歳児から段階的に進める

3歳児に進級したからといって、いきなり歯磨き指導をスタートするわけではありません。発達に合わせて、0歳児から段階的に口の中を健康に保つ習慣づけを行います。0歳児では食事の最後にお茶を飲ませて、食後に口の中をさっぱりさせることを感じさせましょう。

お茶を飲ませるのは、口の中に食べ物を残さないようにする意味もあります。給食後は午睡に入るので、睡眠中の誤嚥を防ぐためにも大切な習慣です。おおまかな目安として、1歳児になるとコップでお茶が飲めるようになり、2歳児では食後のブクブクうがいができるようになります。

歯磨き開始に向けて、「食べた後に口の中をきれいにするとすっきりする」と感覚で覚えていけるように援助しましょう。

歯磨きは自然に身につかない

厚生労働省がまとめた資料によると、子どもの虫歯は減少傾向ではあるものの、依然として他の疾患よりも多い状態です。同資料では、幼児のうちから虫歯を防止することは、生涯に渡る歯の健康に影響を与えると示唆されています。

歯磨きは健康に関わる大切な生活習慣ですが、自然にできるようにはなりません。やり方を教えて、身につくまで繰り返し指導していかなければ習慣にならないのです。保育園でどのように関わるかも、歯磨きを習慣化するうえで影響が大きい要素です。日々の繰り返しが重要なので、家庭と連携しながらじっくり取り組みましょう。

参照:厚生労働省 フッ化物洗口マニュアル(2022 年版)

保育園で歯磨き指導を始めるための準備

クラスの生活の流れに歯磨きを導入するためには、計画的な準備が必要です。スムーズな歯磨き指導の実現は、十分に準備ができているかによって左右されます。何をしておくべきか、ポイントを確認しましょう。

1年間を見通した計画を立てる

歯磨きをいつ始めるか、またどうやって始めるかは、年間カリキュラムを立てる段階で決めておきます。1年間の計画の中に盛り込んでおくことで、タイミング良く保護者への説明ができるからです。歯磨き指導は家庭と連携しながら進める必要があるので、クラスだよりや懇談の場を活用して、保護者に用意してもらう物や家庭での進め方を説明します。

円滑なクラス運営にとって、保護者との協力体制は欠かせません。年間計画を立てて、園での歯磨き指導について早めに伝えておけば、保護者も心づもりができて協力してもらいやすくなります。

保育室の環境を整える

子どもに歯ブラシを持たせる前に、歯磨きをする手洗い場の環境を見直して整えましょう。水がはねて床がぬれると滑って危ないので、床にはマットを敷きます。手洗い場の周りの壁や棚などに尖っている部分がないかもチェックしてください。

コップや巾着袋はどこに置くのか、子どもは立つのか座るのかなど、子どもの動作をシミュレーションしながら確認しましょう。園で歯ブラシやコップを預かる場合は衛生管理も大切なので、洗浄や消毒のために使用する物品や保管場所も決めておきます。

担任間で指導手順を共有する

給食後は食器の片付けや部屋の清掃に加え、トイレや着脱の援助もあって慌ただしい時間帯です。歯磨きを導入するとさらに忙しくなり、歯磨きが「手早く済ませたいもの」になってしまう可能性があります。

焦らずに丁寧な歯磨き指導をするためには、保育士間の連携が欠かせません。クラス担任でミーティングをして、歯磨き指導の流れを共有しておきましょう。

歯磨き指導の進め方

準備が整ったら、歯磨き指導を実践していきます。何から行動していけば良いのかがわかるように、具体的なやり方を3ステップで紹介します。

導入は丁寧に

子どもに歯ブラシを持たせる前に、導入を行います。歯磨きはどんな意味があるのか、どうやってするのかのイメージを子どもにはっきり伝えるのが目的です。丁寧な導入をすると、その後の歯磨き指導がスムーズに進みます。導入のための時間を確保して、充実した内容の導入を行いましょう。

パペットやペープサートを使って歯の大切さを説明するのは、効果的な方法の1つです。バイキンのペープサートを使うと、口の中が汚れた様子を視覚的に伝えられます。虫歯になると怖がらせるのではなく、歯磨きできれいにできる爽快さを知らせましょう。

最初は歯ブラシに慣れるところから

子どもは歯ブラシを持つのがうれしくて、思い切りゴシゴシこすったり、口にくわえて歩き回ろうとしたりします。保育園で歯ブラシを使うことに慣れるのが、はじめのステップです。決まった場所に座らせて、落ち着いた状態で持ち方や動かし方のお手本を見せます。

効果的なのは、保育士が子どもの前で歯磨きの手順をやって見せるやり方です。歯ブラシでブラッシングし、口をゆすぐまでをやって見せると、子どもはじっと観察してイメージをつかみます。すぐに上手に磨けるようにはなりませんが、子どものペースに合わせてゆったり進めましょう。

丁寧に仕上げ磨きをする

子どもが1通り自分で歯磨きをしたら、保育士が仕上げ磨きをします。短い時間で多くの子どもをみる場合、早くしなければと考えがちですが焦らずに丁寧な指導を心がけましょう。

仕上げ磨きは1人ずつ行うので、1対1での貴重な触れ合いの時間でもあります。

「きれいになったね。気持ちいいね」と笑顔で語りかけながら、子どもが心地よいと感じるやり方で援助しましょう。

子どもが楽しく歯磨きできるための工夫

保育園での歯磨き指導で最初のねらいは、「健康、安全な生活に必要な習慣に気付き、自分でしてみようとする気持ちが育つ」ことです。これは保育所保育指針第2章「保育の内容」で示されています。

子どもが自分でやってみようと感じるのは、何かしらの興味や楽しさを感じたときです。子どもが歯磨きを楽しいと感じられるように、保育士は工夫を凝らしましょう。

引用:厚生労働省  保育所保育指針解説

子どもの意欲を引き出す楽しい雰囲気づくり

子どもにとって、歯磨きを義務にしないよう注意しましょう。2歳〜3歳の子どもにとっては、歯磨きも友達と同じことをするうれしさを感じる活動の1つです。園での楽しい活動として行いながら、少しずつ習慣づけていきます。

「歯をきれいにしたら気持ちいいね」と穏やかな言葉がけを行い、笑顔で関わります。穏やかで楽しい雰囲気を作り、子どもの意欲を後押ししましょう。

歌を歌う

保育士が仕上げ磨きをする間、歯磨きのイメージが湧く歌を歌うと子どもはその時間を楽しみにするようになります。「はをみがきましょう」は歯磨きの歌の定番で、歌詞がわかりやすく短いので歌いやすい1曲です。

参照:【童謡】はをみがきましょう

「はみがきじょうずかな」はNHKの幼児向け番組で使われているので、知っている子どもも多い曲です。「仕上げはせんせい」と替え歌にして、歌詞の内容に合わせて最後に子どもと指切りをするとより楽しめるでしょう。

参照:はみがきじょうずかな / おかあさんといっしょ 

手遊び歌の「ワニのかぞく」も歯磨き指導に取り入れましょう。「歯ブラシしゃかしゃか、歯ブラシしゃかしゃか、磨いています」と替え歌にすると、仕上げ磨きにぴったりの歌になります。ワニの家族がお父さんから順番に口を大きく開けていく歌詞が面白く、子どもが歌につられて思わず口を開ける歌です。

参照:ワニの家族 | 歌詞 & 振り付け 子供のうた

絵本を読む

歯磨きについての絵本を読み聞かせると、自然に歯磨きの大切さを伝えられます。歯磨きに関する絵本は多数出版されているので、子どもの好みに合った絵本を探して活用しましょう。読むと子どもが喜ぶ絵本を2冊紹介しますので、参考にしてください。

子どもにもなじみのあるノンタンの絵本です。リズミカルな言葉に合わせて、ノンタンや動物たちが歯磨きをしていきます。一度聞いたらすぐにまねして言いたくなるフレーズが特徴で、子どももすぐ覚えるので歯磨きをするときの掛け声にしてもよいでしょう。

参照:ノンタンはみがきはーみー

歯磨きの効果が楽しく伝わるしかけ絵本です。おでかけ版は丈夫にできているので、しかけ部分も破れにくく、子どもが自分で読むのにも適しています。言葉だけで教えるより、絵本を読むほうが歯磨きのイメージが子どもによく伝わります。

参照:はみがきあそび (あかちゃんのあそびえほん おでかけ版ボードブック)

歯磨きする場所にイラストを貼る

歯磨きする場所を楽しい雰囲気にする場所に変えましょう。歯磨きしたい気持ちになるイラストを印刷して、ラミネートして飾ります。絵が得意な保育士なら、自分で描いてもよいでしょう。手書きでもパソコンでも、好きな方法で描きます。

オリジナルなら、クラスの子どもにぴったりの絵が自由に描けて便利です。最初は歯ブラシの持ち方の絵から始めて、動かし方、うがいのやり方、歯ブラシの片付け方など絵を変えていけます。

歯磨きを嫌がる子どもへの対応

歯磨き指導をスタートしたものの、嫌がる子どもがいる場合はどう対応すべきかポイントをまとめます。歯ブラシを見ただけで嫌がって逃げる子どもや、頑として口を開けない子どももいます。対応のしかたを頭に入れておき、落ち着いて関わりましょう。

無理強いしない

子どもの様子を観察して、歯磨きを嫌がるようになった理由を推測します。歯科を受診して怖かった、歯ブラシを口に入れたら不快だった、何となくブラシを口に入れるのが怖いなど、子どもなりの理由があるはずです。

無理強いせず、嫌がる理由を解消する手立てを考えます。歯磨きに怖さや不快感があるなら、取り組むハードルを可能な限り下げましょう。例えば、歯ブラシを持つだけでいい、持つのも怖いなら、友達が歯磨きしているのを見るだけでいいなど、子どもが安心してできる活動を設定します。結果を急がず、スモールステップで進めましょう。

家庭と協力する

歯磨きが嫌いな子どもへの対応で大切なのは、家庭との連携です。子どもの気持ちをほぐすための手立てを、保護者と一緒に考えていきます。保育園ではできないけれど家庭ではできる方法もあるので、できる範囲で試してもらいましょう。場所や援助する人を変えると、子どもの気分が変わってできるようになる場合もあります。

以下は家庭で工夫してもらえる対応例です。

  • 家族一緒に歯磨きする
  • 場所を変える意味で、お風呂やリビングで歯磨きする
  • 父親や祖父母など普段とは違う家族に仕上げ磨きをしてもらう
  • 歯磨きの前に、子ども向け歯磨き動画を見る
  • 好きな味の幼児用歯磨き粉を使う

どうしても嫌がる時期はストップしてもよい

工夫して働きかけてみてもどうしても嫌がるなら、いったん歯磨き指導をストップして様子を見ましょう。毎日友達が歯磨きしているのを見ているうちに、少しずつ興味が出て「やってみようかな」という気持ちが芽生えてくる場合もあります。

歯磨きは必ず身につけるべき生活習慣ですので、長い目で見て子どもの意欲を待つ姿勢も必要です。

保育園での歯磨き指導はここに注意

保育園で歯磨き指導を進めるとき、押さえておきたい注意点があります。歯磨きを援助する保育士全員で、最初に確認しておきましょう。安全面や衛生面は保育園での援助の土台であり、ここをクリアしてこそ歯磨き指導が成り立ちます。

安全への配慮

押さえるべき注意点の1つめは、安全面での注意です。歯ブラシは喉に刺さると大けがにつながるので、子どもが歯ブラシを持っているときは必ず横につきます。持ったまま走らせないよう、確実に見守りましょう。子どもに対しても、最初にしっかりと約束事を教えます。

洗面台に顔をぶつけるのも、大きなけがになる可能性があるので注意して防止します。歯ブラシを口に入れたまま転ぶと、片手がふさがっているので体を支えきれません。この状態で洗面台に目や口をぶつけてしまうと、皮膚が裂けて出血も多くなります。洗面台の周りでは十分注意して援助しましょう。

衛生面の管理

注意点の2つめは衛生面の管理です。歯ブラシは子どもが直接口に入れるものですので、清潔に管理するのが重要です。歯ブラシやコップの洗浄や保管は、園の方針に沿って確実に行いましょう。使う洗剤ややり方を保育士間で文章化して共有しておきます。水切りカゴを使用している場合は、特に汚れやカビが発生しやすいので管理を徹底します。

歯ブラシを家庭に持ち帰る場合も、洗浄が不十分な場合は使用前に園で洗浄し、清潔な状態で歯磨きさせましょう。

保育園での歯磨き指導で楽しく習慣化!

本記事では、保育園での歯磨き指導のポイントを詳しく説明しました。歯磨きに対しても、子どもは楽しくないと興味や意欲を持ちません。歯磨きをする楽しさをどんな風に演出するかは、保育士にとって工夫のしどころです。

歯は一生使う大切なものです。子どもがしっかり歯磨きの習慣を身につけ、歯の健康を守れるように関わっていきましょう。

歯磨きをはじめ、子どもの生活に密着した援助ができる保育の仕事はやりがいが大きい仕事です。長く保育士として働いていくために、自分に合った園を探して、楽しみながら保育をしてみませんか。転職サービスを活用して、心からの笑顔で働ける保育園を探してみてください。


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