保育園では、保育法にもとづいた方針やカリキュラムを作成します。保育の方針については、大まかに自由保育と一斉保育の2種類が存在します。これから保育士として就職する方にとっては、自由保育と一斉保育の違いは何か気になるでしょう。
そこで今回は、自由保育と一斉保育の違いとメリットデメリットを中心に解説していきます。これから保育士として就職する方は、どのような点に注意すればいいかがわかります。ぜひとも、最後まで読み進めてみてください。
自由保育と一斉保育(設定保育)の違い
自由保育と一斉保育は、子どもたちの発達段階や個性への対応が大きく異なります。自由保育と一斉保育の違いを知るためには、以下の項目の解説が必要です。
- 自由保育とはどんな保育?
- 一斉保育(設定保育)とはどんな保育?
上記の項目を知ることで、自由保育への理解が深まってきます。
自由保育とはどんな保育?
自由保育は、子ども達が自分で考え、自由に遊べる保育環境です。自由保育の歴史は古く、大正時代に遡ります。当時、東京女子師範学校附属幼稚園主事だった倉橋惣三が、児童中心の保育を提唱したことが自由保育のはじまりです。
自由保育では、保育士が子どもの興味や関心を引く遊びを用意し、自由の中にも学びを得る要素を提供してあげます。子どもは好きなことに集中できるので、興味や関心をどんどん伸ばせるのが自由保育の特徴です。
一斉保育(設定保育)とはどんな保育?
一斉保育では、保育園や保育士が定めた方針やカリキュラムに従って、児童が集団で行動する保育法です。皆でお散歩をしたり、同じ時間にお昼寝をしたりすることで、小学校以降で必要な集団生活の基礎を学ぶのが目的です。
一斉保育における保育士の役割は、方針やカリキュラムに沿った指導計画作りと、子ども達の指導です。集団生活の基本を教えつつ、指導計画に沿った保育が求められます。
自由保育の4つのメリット
自由保育と一斉保育の違いを紹介したところで、次は自由保育のメリットについて紹介します。自由保育のメリットは、おもに以下の4点です。
- 子どもの自主性を養える
- 子どもが個性を伸ばせる
- 子どもの好きなことに気づきやすい
- 集中力を鍛えられる
自由保育が採用されている理由がわかるように、それぞれのメリットを解説していきます。
子どもの自主性を養える
子ども達は、保育士が設定した環境内で遊び方を考え、自由に遊べます。より楽しく遊べる工夫を自らおこない実践するので、子どもの自主性が養えます。ときには、保育士が褒めたり遊びに参加したりすることで、子どもは楽しさを共有できて成功体験を得られるでしょう。
子どもが個性を伸ばせる
自分が興味のある遊びに夢中になることで、子どもの個性を伸ばせます。ケガやトラブルにつながる遊び以外は保育士は静かに見守ります。それぞれが楽しいと思う遊びに集中できるので、同じ保育園に通いながら個性を伸ばせるのがメリットです。
子どもにとっても好きな遊びがいっぱいできるので、保育園に通うのが楽しくなるでしょう。
子どもの好きなことに気づきやすい
自由保育では、保育士が子どもの興味や関心をより直接的に感じられるメリットがあります。決められた科目をこなすのではなく、子どもたちが自由に遊ぶ姿を見守ることで、それぞれの興味や関心をより深く理解できます。
遊具やお友達との遊びなど、通園しないとできない遊びもあります。子どもにとって楽しいと思える場を提供できるのが、自由保育の一番のメリットです。
集中力を鍛えられる
子どもは、一つの物事に集中するのが苦手です。決められたことに取り組みはじめても、すぐに注意がほかのものに向いてしまい、同じ行動を長く続けられません。しかし、自由保育では、子どもが好きなことを自由にさせるのが基本方針です。その結果、子どもは遊びに集中しやすくなるので、結果的に集中力が鍛えられます。
自由保育の3つのデメリット
自由保育にもデメリットは存在します。自由保育のデメリットは、以下の3点です。
- 放任になる可能性がある
- 子どもの行動が偏りやすい
- トラブルが増える
デメリットを知ることで、保育士として注意すべき点が見えてきます。それぞれのデメリットについて、詳しく解説していきます。
放任になる可能性がある
自由保育では、子どもの自主性や個性を尊重します。その反面、子どもを好き勝手に遊ばせて過ぎてしまい、放任になりやすい点がデメリットです。子どもの自主性を尊重しながらも、保育士が常に子ども達に注意を向けて危険を察知する必要があります。
子どもの行動が偏りやすい
子どもが苦手なことや嫌いなことを避けやすいのも、自由保育のデメリットです。文字の読み書きや基礎的な運動など、小学校以降で必要とされる要素を身に付けずに卒園してしまう可能性もあります。
小学校に入学後、同級生ができるのに自分の子どもができないことがあるのは、保護者にとって懸念材料です。自由保育では、どこまで子どもの自主性を重んじるかの判断も大切です。
トラブルが増える
自由保育では、子ども同士のコミュニケーションの機会が増えます。そのため、子ども同士のトラブルが起きやすい環境といえます。子ども同士の喧嘩やトラブルは、社会性や人間関係を学ぶ良い機会です。
一方で、大きなケガや事故につながらないように、保育士が適切な対応をおこなう必要があります。とくに、子どもが暴力的な行動を取った場合や不仲が長く続く場合は、保育士の介入や指導が必要です。
遊びを通じて友達との付き合い方を学べるよう、しっかりとサポートしてあげてください。
一斉保育(設定保育)の3つのメリット
次は、一斉保育のメリットについて紹介します。一斉保育には、以下の3つのメリットがあります。
- 子どもの社会性を伸ばせる
- バランスの取れた保育ができる
- 保育士が危険に気づきやすい
それぞれのメリットについて、詳しく解説していきます。
子どもの社会性を伸ばせる
一斉保育では保育士の指導計画のもと、子ども達が集団で行動する機会が増えます。そのため、自由保育よりも協調性を育成できます。集団行動は、その後の学校生活や社会人になってからも求められる行動です。子どもが一番成長する時期に社会性を伸ばすことで、長く続く集団行動での立ち振る舞いの基礎を学べます。
バランスの取れた保育ができる
一斉保育の大きなメリットは、バランスが取れた保育を子どもに提供できる点です。保育士が事前に指導計画を立てることで、必要な学習をバランスよくおこなえます。その結果、時間を最大限に活用した効果的な指導が可能となります。
小学校に入学してから必要な基礎体力や読み書きの基礎をバランスよく学ぶことで、その後の学校生活での勉強も理解しやすくなります。子どもたちにとっても、今何をすれば良いのか迷うことなく行動できるのがメリットです。
保育士が危険に気づきやすい
一斉保育では、子ども達がどのような行動をするのかが明確です。そのため、保育士は子ども達の安全を確保しやすく、危険な状況やトラブルを早期に察知できます。危険な遊びや場所をあらかじめ回避できるので、大きな事故やケガのリスクも減少します。
また、子ども同士でトラブルが起きた際も、直前にしていた行動がわかるのですぐに仲介可能です。保育士は、保護者の大切な子どもを預かる立場です。危険を察知して、子ども達が安全に過ごせる環境を作ってあげてください。
一斉保育(設定保育)の3つのデメリット
一斉保育にもデメリットは存在します。一斉保育の3つのデメリットは、以下の通りです。
- 子どもの自主性が伸びにくい
- 子どもの自由時間が減る
- 一斉保育が苦手な子どもがいる
それぞれのデメリットを把握して、自分に合った保育方針を考えてみてください。
子どもの自主性が伸びにくい
一斉保育では、保育士が指示を出すことが多く、子ども達が自ら考える機会が減少します。そのため、一斉保育の環境では子どもの自主性が育ちにくくなる点がデメリットです。常に指示があるのが当たり前だと感じてしまうと、子どもの自主性は育ちません。
人生を主体的に生きるためには、自分で考えて行動していく能力が必要です。一斉保育では集団行動をおこないつつ、いかに子どもの自主性を伸ばしていくかが鍵になります。
子どもの自由時間が減る
一斉保育は、カリキュラムの特性上、子ども達が自由に遊べる時間が減少します。基本的には、保育士の指示に従って活動をおこなうためです。その結果、子ども達が自分の好きなことを自由に選んで遊ぶ時間は制限されます。
一斉保育(設定保育)が苦手な子どもがいる
一斉保育は、集団でカリキュラムに従って行動するため、団体行動が苦手な子どももいます。とくに、自由に遊びたいと感じる子どもや、指示を待つのが苦手な子どもにとっては、ストレスになるかもしれません。保育士は、こうした子ども達の気持ちを理解し、適切なサポートをおこなうことが求められます。
自由保育で保育士が気をつける4つのポイント
自由保育は、保育士は以下のようなポイントに気をつける必要があります。
- 必要なときは保育士から声をかける
- 子ども同士のトラブルの介入をする
- 子どもの行動を予測する
- 保護者への報告
それぞれのポイントを理解して、安全に自由保育を提供してあげてください。
必要なときは保育士から声をかける
自由保育では、状況に応じて保育士から子どもに働きかけることが大切です。とくに、積極性の低い子どもは、友達作りが苦手で孤立しやすい傾向にあります。保育士から声をかけて周囲との仲を取り持つことで、子どもが孤立せずに楽しく遊べるようになります。
しかし、子どもが一人で遊んでいる場合でも、それが必ずしも悪いことではありません。子どもが一人遊びに集中しているときは、そっと見守ってあげましょう。仲間外れのような状況を作らず、クラス全員が楽しく遊べる環境を作ってあげられるかどうか、保育士の手腕が問われます。
子ども同士のトラブルの仲介をする
自由保育は子ども主体の保育なので、子ども同士のコミュニケーションの機会が増えます。その結果、子ども同士のトラブルが起きやすい環境となります。子ども同士の喧嘩やトラブルは、社会性や人間関係を学ぶ良い機会です。
しかし、どちらかが暴力的な行動をとったり問題が長く続いたりする場合は、保育士が仲介して仲直りのきっかけを与えてあげてください。仲直りのやり方を教えるのも、保育士の役割です。
子どもの行動を予測する
自由保育では、子どもが自由に遊べる時間を多く採用しています。そのため、ときには子どもが予想外の行動をする可能性があります。保育士は子どもの行動をできるだけ予測し、大きな事故やケガから子ども達を守らなければいけません。
また、子どもが興味を持ちそうな遊びを考え、提案してあげることも大切です。全て子ども任せにするのが自由保育ではありません。常に子どもの行動を予測し、楽しい時間を一緒に作ってみましょう。
保護者への報告
自由保育はその特性上、保護者との話し合いも非常に重要です。保護者に保育園での様子や子どもが興味を持っていることを伝えることで、安心して子どもの個性と自主性を伸ばす環境が作れるためです。
同時に、保護者から家にいるときの様子や行動を聞くことで、自由保育の質を向上できます。保育士と保護者が協力して、子どもにとって楽しく学べる環境作りをしてみてください。
引用:自由保育と一斉保育に対する保育者の保育観 : 幼小一貫教育への一考察
まとめ
自由保育は、取り入れた保育園の特色を色濃く反映する保育方針です。お遊戯会や運動会をおこなう保育園もあれば、行事をおこなわない保育園もあります。自分の理想とする保育方針を明確にして、自由保育に取り組んでみましょう。
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