保育士試験には筆記試験と実技試験があります。実技試験は、保育士として必要な資質が備わっているかを確認するための試験です。今回は、これから保育士実技試験に挑戦する受験生に向けて、試験の内容と受験対策について解説していきます。
実技試験を突破して保育士として働きたいと考えている受験生は、最後まで読み進めてみてください。
保育士の実技試験の概要
保育士試験で筆記試験を突破すると、次は実技試験です。まずは、実技試験がどんな内容になっているかを解説していきます。合わせて、実技試験の合格率についてのデータを紹介します。
保育士実技試験の内容
保育士実技試験は、「音楽」「造形」「言語」の3科目の中から2科目を選択します。実技科目は、願書を提出する際に選択するので、前もって受験科目を選択しておいてください。3科目全て配点は50点になっており、合格ラインは30点です。
2科目合わせて合格ラインの6割突破ではなく、どちらの科目でも6割となる30点を超えないと合格になりません。そのため、受験科目を選択したあとは、まんべんなく受験対策する必要があります。
以下、過去の実技試験の内容をまとめてみました。
選択科目 | 試験内容 | 着目点 |
音楽 | 課題曲(2曲)を歌いながら演奏 | 技術とリズム感 |
造形 | テーマをもとにした絵画 | 保育士に適切な描写と色使い |
言語 | 4つの課題の中から1つを選択し、3分間おはなし | 話し方と表現力 |
幼稚園教諭免許状をすでに取得している方は、上記の実技試験が免除になります。幼稚園教諭免許状には1種、2種、専修がありますが、全て実技試験の免除対象です。
出典元:保育士実技試験の内容
保育士実技試験の合格率
保育士実技試験の合格率は、年度や地域によって異なります。こども家庭庁が発表した令和4年度の実技試験は、34,345人が受験して10,128人が合格しています。合格率は、約29%でした。
決して合格率が高いとはいえない数値ですが、事前に受験対策をおこなっていけば難しい試験ではありません。不安を感じる前に、今からできる受験対策を少しずつ進めていきましょう。
保育士実技試験の目的
保育士実技試験は、保育士としての実務能力や技術を確認することが目的です。実技試験を通じて、子どもたちの健康や安全を守るために適切な知識や技術を持っているか確認できます。
また、実技試験に合格することで、保育士としての資質や姿勢を持っていると証明できます。自信をもって子ども達と触れ合うために、ご自身の持っている保育保育に関する知識と技術を実技試験にぶつけてみてください。
保育士実技試験の音楽はどんな対策が必要?
音楽の実技試験は、保育士の音楽的な技術力と表現能力を評価するのが目的です。音楽の実技試験では、以下の楽器のいずれかを選択し、課題曲2曲を弾きながら歌います。
- ピアノ
- アコースティックギター
- アコーディオン
音楽を選択する受験生のために、過去の出題内容や受験対策を紹介していきます。
音楽の過去の出題内容
一例ですが、京都市での音楽の実技試験では、以下の曲が出題されています。
令和4年度
ピアノ弾き歌い | とんぼのめがね |
歌唱 | えがおかがやいて |
令和3年度
ピアノ弾き歌い | はしの上で |
歌唱 | こぐまの二月、はる なつ あき ふゆ |
松江市での音楽の実技試験では、以下の課題曲が提示されました。
令和5年度
演奏・弾き歌い | 春がきた、うみ、犬のおまわりさん |
課題曲は毎年異なりますが、曲の難易度や注意事項は共通です。過去に提示された課題曲は、ミスなく演奏できるだけの技術を身につけておきましょう。
出典元:令和5年度 松江市職員採用試験
音楽の受験条件
音楽での実技試験の条件は、以下の通りです。
- 楽譜の持込可能
- ピアノ以外の楽器は持参
試験会場に用意されている楽譜は、コードのみ記載された簡易的な楽譜です。本番で演奏に集中するためには、ご自身で紙の楽譜を用意して練習しておく必要があります。とくに、ピアノを選択する受験生は、左手の演奏にアレンジを加えなければいけません。アレンジを考慮した楽譜を準備しておきましょう。
ギターとアコーディオンでは、提示されたコードネームを尊重した演奏が求められます。全ての楽器で移調が可能なので、移調後のコードネームを楽譜に記載しておくと演奏しやすくなります。
いずれの楽器も前奏と後奏の演奏は任意です。演奏するかどうかは、あらかじめ決めたほうが当日落ち着いて試験にのぞめます。歌詞は1番のみの歌唱なので、試験を想定した練習を積み重ねていきましょう。
音楽の受験対策
音楽の実技試験では、以下の対策が必要です。
- 過去の課題曲を確認する
- 練習を録画する
- 最適な楽譜を選ぶ
過去の課題曲を確認することで、出題傾向を把握できます。保育園でポップスは演奏されません。子ども達が楽しめる曲はある程度決まっているので、過去の課題曲を覚えておくと演奏に必要な奏法や注意点を吸収できます。
また、練習する際は録画しましょう。ご自身の演奏を客観的に見ることで、姿勢や目線などの細かい点まで確認できるためです。保育士は子ども達に向かって笑顔で演奏します。音楽の実技試験でも、子ども達に向かって演奏している意識が重要です。
実技試験では、演奏しやすい楽譜の準備も大切です。楽譜の種類によって、演奏しやすくなったり集中できなくなったりするためです。上記の受験対策を徹底して、実技試験当日を迎えてください。
保育士実技試験の造形はどんな対策が必要?
造形の実技試験では、当日に課題が提示され、その課題をもとに絵を描いていきます。造形の実技試験を選択する受験生のために、過去の出題内容や受験対策について詳しく解説していきます。
造形の過去の出題内容
造形の実技試験では、保育の一場面を絵で表現する課題が出されます。具体的な課題と条件は、試験当日にならないと発表されません。そのため、保育に関する多様な場面をイメージして練習することが重要です。
造形の受験条件
造形の受験者は、以下の持ち物が必要です。
- 鉛筆もしくはシャープペンシル(HBから2B)
- 色鉛筆(12色から24色程度)
- 消しゴム
- 腕時計(アラームなどの音が鳴らず、時計機能のみのもの)
造形では、クレヨンやマーカーペンは使用できません。色を表現するためには、色鉛筆で全て対応する必要があります。シャープペンシルも使用可能ですが、鉛筆を複数本用意しておきましょう。HBから2B程度まで準備しておくと、陰影を付ける際に役立ちます。
また、造形は制限時間があるので、時間を確認するために腕時計も必須です。持込できる腕時計は、音が鳴らないアナログタイプの腕時計です。通話機能付きやアプリと連動しているデジタル時計は、対象外になるので注意しましょう。
造形の受験対策
造形の受験対策には、以下のポイントがあります。
- 明るくてわかりやすい絵を描けるようにする
- 制限時間内に描き終える練習する
- 優先順位を決める
造形では、明るくてわかりやすい絵を描くことが重視されています。保育士として絵を描く際に、子どもに好まれる絵を描く必要があるためです。色使いや描写を工夫して、子どもが楽しめるような絵を描けるように練習しておきましょう。
また、造形の実技試験には制限時間があります。どんなに素晴らしい絵でも、時間内に描き終わらないと減点対象になってしまいます。練習の際も時間を測定して、イメージした絵を描くのにどの程度時間がかかるか把握しておくことが大切です。
そして、絵を描く際には工程を重視しましょう。人物や背景など部分的に練習しておくことで、描写の優先順位を決められるようになります。造形の実技試験では、常に時間配分を考えながら試験にのぞんでください。
保育士実技試験の言語はどんな対策が必要?
最後に、言語の実技試験の紹介です。言語と聞くとわかりにくいですが、言語は子どもに聞かせるおはなしの試験になります。過去にどのような課題が出題されたのか、どのような受験対策が必要かについて、詳しく解説していきます。
言語の過去の出題内容
言語の実技試験では、3歳児クラスの子ども15〜20人程度を想定した3分間のおはなしを実演します。令和4年の言語実技試験では、以下の課題が出題されました。
- ももたろう
- 3びきのこぶた
- おおきなかぶ
- 3びきのやぎのがらがらどん
4つの課題の中から1つを選び、絵本や道具を一切使用せずに3分間おはなしします。
言語の受験条件
言語の実技試験では、以下の条件で進められます。
- 15人~20人程度の子どもがいることを想定する
- 3歳児の子どもが楽しめるようにおはなしを3分にまとめる
- 適切な身振りや手振りを加える
- 子どもに見立てた椅子が前方にある
3歳児は、興味のないことには集中できない年齢です。この年齢の子どもに、いかに興味を持たせるおはなしができるかが言語の実技試験のポイントになります。
言語の受験対策
言語の実技試験では、以下のポイントが採点に影響します。
- 声の大きさと視線
- 話の抑揚とスピード
- 身振りや手振り
- おはなしのまとめ方
言語の実技試験で一番大切なのが、声です。後ろの子どもまで聞こえる声の大きさを意識して、視線は常に子ども達に向けておはなしをします。単調なおはなしはすぐに飽きてしまうので、適度なスピードと声に抑揚を付けて子ども達が楽しめるように進行しましょう。
おはなしの最中は、身振り手振りを使って子ども達の視線が飽きない工夫が必要です。子どもが楽しめる身振りや手振りを覚えて、実技試験で披露することが大切です。実技試験では、子ども達に見立てた椅子が用意されます。同様のシチュエーションで練習してみると、実技試験でも緊張せずにおはなしができます。
また、おはなしの制限時間は3分間しかありません。短い時間でおはなしをまとめるためには、事前に原稿用紙におはなしをまとめる練習が必要です。要点を絞って、子どもが飽きないストーリー構成を考えましょう。
出典元:過去の試験問題
保育士実技試験の選択方法は?
保育士試験の実技は、音楽、造形、言語の3科目から2科目を選択します。どの科目を選択するかの判断は、保育士試験の合否に関わる重要な選択です。後悔しない選択方法について、詳しく解説していきます。
得意な科目を選ぶ
保育士実技試験の受験者は、自分の得意な分野や過去の経験を活かして科目を選択できます。たとえば、ピアノやギターの演奏経験がある場合は音楽、絵を描くことが得意な場合は造形、話すことが得意な場合は言語のように、自分の強みを活かせたり興味を持っていたりする分野の選択を推奨します。
練習しやすい科目を選ぶ
実技科目の選択では、受験者が楽しみながら練習できる科目かどうかが重要です。得意な科目や興味を持っている科目に加えて、練習しやすい環境が整っているか考慮しましょう。ピアノの演奏が好きでも、自宅にピアノがなければ十分な練習時間が確保できません。楽器を練習する環境がない受験生は、造形と言語の対策に集中しましょう。
保育士実技試験に関する質問
保育士の実技試験を検討している受験生の中には、それぞれ実技試験に関する疑問を持っています。そこで、保育士実技試験に関するよくある質問をまとめました。ご自身が抱えている疑問があれば、参考にしてみてください。
保育士資格の取得費用はいくらかかりますか?
保育士試験合格に向けて学校へ通学する場合、専門学校では200万円以上、短期大学では250万円以上、4年制大学では400万円以上の学費が必要になります。通信講座の受講費用は、およそ5〜10万円程度です。独学で勉強する場合は、参考書や対策書のみ必要なので、5,000円から1万円程度とされています。
働きながらでも保育士資格は取得できますか?
社会人や主婦でも、保育士になることは可能です。保育士には複数のルートがあるので、ご自身に適した方法で資格取得を目指せます。忙しい社会人や主婦は、短大や専門学校への通学が困難ですが、通信教育や独学で資格取得が可能です。
実技試験の選択科目に難易度はありますか?
実技試験の科目に難易度の差異はありません。科目を選択する際は、特技を活かせる科目や十分な練習ができる科目を選択してください。試験対策を万全にすることで、余裕をもって実技試験にのぞめます。
筆記試験の内容を教えてください
筆記試験では、以下の9科目が出題されます。
- 保育原理
- 教育原理
- 社会的養護
- 子ども家庭福祉
- 社会福祉
- 保育の心理学
- 子どもの保健
- 子どもの食と栄養
- 保育実習理論
筆記試験に合格したあと、実技試験を受験することになります。
まとめ
保育士実技試験は、音楽、造形、言語の3科目から2科目を選択して受験します。ご自身が得意な科目を選択して、楽しみながら試験対策に励んでみましょう。保育士資格を取得できたら、いよいよ保育士としての新しい生活が待っています。
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