「保育士の勤務時間って実質どれくらい?」
「なんで勤務時間が長くなりやすいの?」
保育士は残業や持ち帰り仕事が多いイメージがあるため、勤務時間の長さが気になっている方もいるでしょう。
そこで本記事では、保育士の平均の勤務時間や時間外労働が増える理由を解説していきます。この記事を読めば保育士の労働時間が長くなりがちな原因がわかり、とるべき対策がみえてくるでしょう。
保育士の平均勤務時間
厚生労働省が実施した「令和3年賃金構造基本統計調査」によると保育士の所定内実労働時間数は167時間です。
労働基準法第32条では、労働時間が1日8時間、1週間で40時間内と義務付けられています。月に21日間出勤した場合の労働時間が168時間(21日×1日8時間)なので、保育士の平均労働時間は、この勤務形態とほぼ同水準と考えるとイメージしやすいでしょう。
公立保育士の平均勤務時間は?
地方公務員に該当する公立保育士の勤務時間は、各自治体が定めた条例によって決められています。
基本的には、以下どちらかの法律に沿って労働時間を設定している場合が多いです。
全国保育協議会がおこなった調査によると、公立の保育園で働く保育士の実務時間は週40時間〜50時間未満が全体の71.1%を占めています。
出典:全国保育協議会
つまり、全体の7割以上もの保育士が、労働基準法の定める週40時間内労働、国家公務員の法律が定める週38時間45分内労働を超えて仕事をしている状態。この結果から、残業が発生しやすい職種であると予測できるでしょう。
公立保育園は「残業があっても残業代がもらえる」「定時に帰れる」といったイメージがもたれやすいですが、実際は残業や持ち帰り仕事が習慣化しているところも多いです。
実際にSNSや掲示板で、時間外労働に悩む公立保育士の声をたくさんみかけました↓
- 残業しても残業代が出ない
- 毎日2時間〜3時間の残業は当たり前でした
- 臨時で働いていましたが、サービス残業や持ち帰りが多かった
- 公立保育園で働いていたとき残業も持ち帰りも山ほどありました
- 個人的な仕事(書類の下書き・壁面装飾など)は全部持ち帰りです
参考:Yahoo!知恵袋
公立保育園には、福利厚生の充実や昇給制度による収入の安定化など私立保育園とは異なるメリットがあります。しかし、勤務時間の面では残業や持ち帰り業務の課題があるのが現状です。
幼稚園教諭の平均勤務時間は?
厚生労働省が実施した「令和3年賃金構造基本統計調査」によると幼稚園教諭(保育教諭を含む)の所定内実労働時間数は171時間です。保育士の所定内労働時間は167時間なので、幼稚園教諭のほうがやや勤務時間が長い傾向にあります。
幼稚園の場合、教育時間の標準が4時間とされているため子どもを預かる時間は9:00〜14:00が一般的。子どもたちが帰ったあと、職員は教室の清掃や事務作業、次の日の準備をおこなっています。
「仕事に集中できる時間があるから定時にあがれる」というイメージをもたれやすいですが、残業や持ち帰り仕事が多発している幼稚園も少なくありません。
以下は、残業や持ち帰り仕事に悩む幼稚園教諭の声です。
- 睡眠時間4〜5時間以外は、全部仕事でした
- 土曜に出勤した時は一切お金がでていません
- 預かり保育で残業してるのに残業代が出ない…
- 毎日の持ち帰り仕事だけでなく休日も常に仕事してます
- 運動会や発表会前になると22時まで残業する日も多かったです
- 定時に帰れる日はほとんどありません。普段は19時近くまで残業をし、行事前は21時近くに退勤することもあります
参考:Yahoo!知恵袋
幼稚園も保育園と同様に、残業や持ち帰り仕事が習慣化しやすい課題を抱えているのがわかります。
保育士の勤務時間は雇用条件によって異なる
保育士の勤務時間は雇用条件の内容によっても異なります。
主な勤務時間のタイプは以下の4つです。
- シフト制
- 固定時間制
- 変形労働時間制
- 短時間正社員制
タイプによってプライベート時間に大きく影響するので、入社前に雇用条件をよく確認しておくのが大切です。
①割り振られた勤務パターンにあわせて出勤する「シフト制」
シフト制の場合、保育園の開園時間内で保育士の1日の勤務時間が8時間となるようにローテーションが組まれます。
シフトは大きく分けて、早番・中番・遅番の3種類。たとえば、7:00〜20:00まで開園している保育園の場合、以下のようなシフトの組み方ができます。
- 早番:7:00〜16:00
- 中番:9:00~18:00
- 遅番:11:00〜20:00
※休憩1時間/8時間労働の場合
月単位でシフトは変更されることが多く、保育士は割り振られた勤務パターンにあわせて出勤をします。
勤務時間が日によって変わるため、スケジュール管理を徹底し、遅刻や勤務時間の見間違いを防ぐ必要があるでしょう。
②毎日同じ時間で働く「固定時間制」
毎日同じ時間で働く「固定時間制」を導入している保育園もあります。
たとえば、9:00〜18:00の固定時間で契約した場合、1年間その時間帯で勤務します。また、遅番要員として11:00〜20:00で契約した場合、最後の子どもが帰るまで毎日遅番の業務を務めます。
固定時間制なら、シフト制のように毎日の勤務時間を確認する手間がかかりません。また、生活リズムが一定に保たれるため、体調管理もしやすくなるでしょう。
ただし園の運営上、すべての保育士をこの形態で雇用することは難しいためシフト制と併用しているケースが多いです。
③1日ごとに勤務時間を変えられる「変形労働時間制」
変形労働時間制は、1日の労働時間を変動させることで、月単位や年単位で法定労働時間を維持する勤務形態です。
たとえば、以下のような勤務時間の設定が可能になります。
- 行事やイベントなどで忙しい時期:1日10時間労働
- お盆中で子どもの人数が少なく落ち着いている時期:1日6時間労働
月や年単位で法定労働時間の範囲内に収まっていれば、残業にはなりません。
忙しい時期の頑張りが、落ち着いた時期の短時間勤務で報われる仕組みなのでモチベーション維持にもつながりやすいでしょう。
④労働時間を短縮して正社員として働く「短時間正社員制」
「短時間正社員制度」とは、正社員が勤務時間を短縮できる雇用形態です。
正社員は必ずしもフルタイムで働く必要はありません。自身のライフスタイルにあわせて勤務時間が短縮可能です。
- 育児・介護などとの両立を図りたい方
- 健康維持のために仕事と私生活のバランスをとりたい方
- 体力的にフルタイム勤務が難しいがまだまだ働く意欲はある方
月収や賞与は、労働時間に比例して減額されるケースが多いです。フルタイムで働く正社員と同じ額はもらえませんが、賞与をもらう機会や昇給するチャンスは公平に与えられます。
フルタイムで働くのが難しい場合、短時間正社員制度を取り入れている園を積極的に探してみてはいかがでしょうか。
保育士の勤務時間が長いと言われる理由5つ
ここからは保育士の労働時間が長いと言われる理由を解説していきます。
- 残業や持ち帰り仕事が多い
- 早めに出勤しなければならない
- 休憩時間がない
- 有給休暇を取得しづらい
- 年間休日が少ない
理由①残業や持ち帰り仕事が多い
保育士は、人手不足や仕事量の多さから残業や持ち帰り仕事が発生しやすいです。勤怠管理がずさんな保育園も多く、残業代が支払われないケースも珍しくありません。
自分のプライベートを削っている状態なので、時間を損している感覚におちいり勤務時間の長さをより強く感じるでしょう。
理由②早めに出勤しなければならない
出勤時間の30分〜1時間前くらいに勤務するのが暗黙のルールになっている保育園もあります。
保育着に着替えたり、活動の準備をしたりする時間があるので余裕をもって出勤する必要はありますが、出勤時間を早めすぎるのはNGですね。
早出勤をすれば8時間労働を超えるため、超過分の残業代を本来は支払わなければなりません。しかし、残業代が出るケースはほとんどないでしょう。
早起きを強いられるうえに、その対価を得られないとなれば、保育士の不満が募るのも無理はありません。
以下の記事では、保育士の残業時間や残業代について解説しているので、ぜひあわせてご覧ください。
理由③休憩時間がない
休憩時間がない保育園は、勤務時間が長くなります。
労働基準法により、6時間以上働く方は、最低45分の休憩。8時間以上働く保育士は、少なくとも1時間の休憩をとることが義務付けられています。
第三十四条 使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
労働基準法 e-Gov法令検索
この法律を無視して、休憩時間を確保しない保育園も少なくありません。休憩をとらないまま働くと8時間労働を超えるため、本来であれば残業代も発生します。しかし、支給していない保育園が多いです。
休憩なしの保育園で働いていた経験がありますが、働きっぱなしの状態なので1日がとても長く感じました。
以下の記事では、保育士の休憩事情を網羅的に解説しているので、詳細が気になる方はぜひチェックしてみてください。
理由④有給休暇を取得しづらい
有給休暇を取得しづらい保育園で働くと、休む権利を粗末にされた感覚を覚え勤務時間が長く感じる場合もあります。
- 「その日は無理」と言われ続ける
- 希望を出すと上司に嫌な顔をされる
- 自分の好きなタイミングで取得できない
- 休んだことに対して愚痴や文句をいわれる
有給休暇は法律で定められている労働者に与えられた大切な権利です。本来であれば、自分の好きなタイミングで休暇を取得できる環境でなければなりません。
理由⑤年間休日が少ない
保育士の年間休日の少なさも、勤務時間が長く感じる要因の一つとして考えられます。
独立行政法人福祉医療機構が正社員保育士の年間休日数を調査したところ「101日以上106日未満」の回答がもっとも多かったです。
出典:独立行政法人福祉医療機構「2020年度 「保育人材」に関する
アンケート調査」
厚生労働省の調査によると労働者1人当たりの年間休日総数の平均は116. 1日。全職種と比較してみて保育士の年間休日数が少ない傾向にあるのがわかります。
保育園は保護者の就労ニーズにあわせて開園しているため、基本的に夏休みやお盆休みはありません。それが年間休日が少ない原因のひとつでしょう。
保育士の勤務時間が長すぎる職場でつらいなら転職するのもあり!
残業や持ち帰り仕事の習慣化や休憩ゼロの労働環境で働いている場合、転職するのも一つの方法です。
無理に働き続けると心身的負担がかかり、体調に支障をきたしかねません。
保育士の勤務時間を大切にする保育園の特徴を以下にまとめました。
- 年間休日数が多い
- 有給の消化率が高い
- 休み・休憩に対応できる人員を確保している
- ICTシステムを導入し業務効率化を図っている
- 休憩室を完備し休憩時間をしっかり確保している
- タイムカードを活用して勤怠管理を徹底している
働き方改革の影響や職員の定着率向上のために、保育士が働きやすい環境を整える保育園が増えてきました。転職する際は、しっかり各園の労働環境をリサーチして自分にあった職場を探すのがよいでしょう。
そこで、勤務時間の管理が行き届いている保育園をお探しの方は、ぜひ弊社「しんぷる保育」にご相談ください。
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保育士の勤務時間は長くなりやすい傾向にあるのでしっかり管理しよう!
保育業界は勤怠管理が徹底されていない職場も多いため、自分で管理していく姿勢も大切です。
たとえば「絶対に残業をしない」と決めて業務内容を見直したり、周りの目を気にせずに休憩時間や有給を取得したり…。
とはいえ、あまりにも労働環境に対する意識が低い職場であれば、思い切った行動を取りづらいでしょう。
もし改善が難しい場合は、転職するのも一つの方法です。自分にあわない場所で働き続けるとストレスが蓄積して体調を崩しかねないので、環境を変えるのも有効な手段といえるでしょう。
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