共働き世帯にとって、子どもが病気になったときに預けられる病児保育は貴重な存在です。病児保育に携わる病児保育士は、家庭で保育が困難な保護者に代わり、体調の悪い子どもを一時的に預かり保育を行います。
一般的な保育士に比べ、病児保育士は多くありません。よって、病児保育士は具体的にどんな仕事をするのか、病児保育士になるためにはどうするのか、よくわからないという人もいるでしょう。本記事では、病児保育士の仕事内容や給料相場、病児保育士になるために必要な資格について解説します。
病児保育士とは
病児保育士は、病児保育に関わる保育士のことです。病児保育士という資格はなく、保育士や看護師の資格があれば、病児保育士として働けます。病児保育を行っている施設によっては、保育士や看護師の資格や経験がなくても採用を行っています。
病児保育の形態
病児保育は、子どもが体調不良の際、自宅で保育が困難な場合に、病院や保育所などで子どもを一時的に保育することです。対象となる子どもは乳幼児から小学6年生までという施設が多いです。病児保育はその内容によって3つの型に分けられており、対象の子どもや対応している施設が違います。
- 病児対応型・病後児対応型
- 体調不良対応型
- 非施設型(訪問型)
病児対応型・病後児対応型
病児対応型・病後児対応型の施設では、病気になり始めてから回復期に入った子どもを預かります。対象となるのは、集団保育が困難であり、保護者の勤務等の都合により家庭で保育できない子どもです。
このような施設では、利用する子ども10人につき1人以上の看護師、子ども3人以上につき1人以上の保育士を配置基準としています。
体調不良対応型
体調不良対応型の施設では、通常の保育中に体調不良になった子どもを一時的に預かります。対象となるのは、通常の保育中に微熱を出すなど体調不良となり、保護者が迎えに来るまでの間、緊急的に対応が必要になった子どもです。主に通常の保育園内の空きスペースなどで病児保育を行います。
このような施設では、看護師等を常時1人以上配置するように求められているため、全ての保育園で対応しているわけではありません。また、預かる子どもの人数は看護師等1人につき2人程度です。
非施設型(訪問型)
非施設型の施設では、自宅等に病児保育士が訪問し、病児保育を行います。対象の子どもは、集団保育が困難であり、保護者の勤務等の都合により家庭で保育ができない子どもです。子ども1人につき、1人の病児保育士が病児保育に当たります。
病児保育士の働く場所
病児保育士の働く場所はさまざまです。病児対応と病後児対応によっても、実施している施設は異なります。
引用:厚生労働省 病児保育事業
病児保育専門施設
病児保育専門施設は、民間企業やNPO法人などが運営する施設です。病児対応型の中では10%程度で数は多くはありません。看護師と保育士が常駐しており、病児・病後児を対象に預かりをしています。
医療施設に併設された施設
病児対応型施設では、医療施設に併設された施設が一番多く、全体の7割以上を占めます。医療施設に併設されているので、医師が近くにいて対応にあたることも可能です。医療施設に併設された施設では、近隣病院等から保育士及び看護師等が駆けつけられる迅速な対応が可能な場合は、看護師等の常駐は必須とされていません。
保育施設に併設された施設
病後児対応型施設で最も多いのが保育施設に併設された施設です。病児対応型にも保育施設に併設された施設も含まれますが、対象は主に軽症の子どもです。病児の対象は施設によってさまざまで、「感染症は預かり不可」「発熱38℃まで」など独自の基準が設けられています。
病後児の対象も施設によって異なり、発熱から経過した日数や医師の連絡票などを目安に利用可能か判断されます。
病後児対応施設
病後児のみを対象にした専門の施設です。症状は回復して元気はあるが、登園・登校の許可がでない子どもを対象にした施設です。
訪問型の施設
訪問型の施設では、保護者の要請で自宅などに病児保育士が派遣されて病児保育を行います。自宅など子どもが慣れた場所での保育のため、子どもが安心して過ごせるでしょう。訪問型の施設では、保育士や看護師の資格をもたず、施設独自の研修等を受けたスタッフが対応する場合もあります。
病児保育士の仕事
病児保育士の仕事は、体調の悪い子どもたちが安静に過ごせるように保育することです。ここでは、病児保育士の1日の仕事の流れから、求められるスキル・給料などについて解説します。
病児保育士の1日の仕事の流れ(例)
病児保育士は施設や子どもの健康状態などによって仕事の内容が違います。子どもの状態によっては、医療機関への受診に付き添ったり、提供する保育内容を変更したりと臨機応変な保育が必要です。保護者に子どもの1日の様子を詳細に伝えるため、記録をとることも欠かせません。基本的な病児保育士の1日の仕事内容をご紹介します。
時間 | 乳児 | 幼児・小学生 |
8:00~ | 病児保育の受付保護者からの聞き取り検診・視診・検温室内遊び | 病児保育の受付保護者からの聞き取り検診・視診・検温室内遊び |
9:00~ | おむつ交換水分補給・おやつ室内遊び | 手洗い水分補給室内遊び |
11:00~ | 片付けおむつ交換検温 | 片付け 検温 |
11:30~ | 昼食 | 排泄手洗い |
12:00~ | おむつ交換お昼寝 | 昼食お昼寝 |
14:30~ | 目覚めおむつ交換検温 | 目覚め排泄検温 |
15:00~ | 水分補給・おやつ室内遊び | 水分補給・おやつ室内遊び |
お迎え時 | 保護者への申し送り | 保護者への申し送り |
病児保育での室内遊びは、安静にリラックスして過ごせる内容を提供します。子どもの様子を見ながら内容を変更したり、時間を短くしたりなど慎重に行う必要があります。
病児保育士に求められるスキル
病児保育士に求められるスキルは、通常の保育士のスキルに加えて次のようなものです。
- 短時間で子どもとの関係を築くコミュニケーション力
- 子どもの状態の変化に合わせて臨機応変に対応する力
- 急変時の基本的な応急処置力
- 子ども一人一人に合わせた保育を提供できる力
病児保育を利用する子どもはその日によって違うため、短時間で子どもとの関係を築かなくてはいけません。また、1日の中で子どもの健康状態は変わる可能性があります。そのような時に落ち着いて適切に対応できる力が求められます。
病児保育士の給料
病児保育士の給料は、一般的な保育士とあまり変わりません。月給約20万円の施設が多いです。医療施設に併設された施設の方が給料が高い傾向にあります。経験やスキル・雇用形態などによっても変動します。求人情報を確認する際は給与額だけでなく、資格や待遇についても確認しましょう。
病児保育士の資格
「病児保育士」という資格はなく、多くの施設では保育士か看護師の資格があれば病児保育士として働けます。しかし、病児保育士として働くためには、医療知識や対処法などを身に付けたいという人もいるでしょう。病児保育士としてさらにスキルアップしたいという人には、民間の資格があるのでご紹介します。
認定病児保育専門士
「認定病児保育専門士」は、一般社団法人全国病児保育協議会が認定する資格です。
受験資格 | 全国病児保育協議会に施設または個人で加盟しており、常勤で2年以上(非常勤の場合は2年以上週20時間)働く保育士や看護師施設長から推薦を受けられる人全国病児保育協議会が開催する「病児保育専門士認定講習会」を全て受講できる人 |
費用 | 研修費用:25,000円資格認定料:10,000円 |
資格取得までの流れ | 資格認定講習会への参加課題・研修レポートの提出面接・口頭試問登録及び認定手続き |
医療保育専門士
「医療保育専門士」は、一般社団法人日本医療保育学会が認定する資格です。
受験資格 | 保育士資格をもっている人病児保育施設で常勤1年以上(非常勤の場合は年間150日以上かつ2年以上)の勤務経験のある人日本医療保育学会の正会員として1年以上経っている人 |
費用 | 研修費用:30,000円資格認定料:20,000円 |
資格取得までの流れ | 資格認定講習会への参加課題・研修レポートの提出事例研究論文提出口頭試問登録及び認定手続き |
病児保育士のメリット
病児保育士には、少人数での保育が行えたり、持ち帰り仕事が少なかったりするなどのメリットがあります。一般的な保育士にはないメリットを3つご紹介します。
- 少人数での保育が行える
- 持ち帰り仕事がない
- さまざまな子どもと関われる
下記では、それぞれのメリットについて解説します。
少人数での保育が行える
病児保育では少人数の保育が行えます。病児・病後児対応型の施設では保育士1人につき3人までの子どもの保育をします。少数の子どもに対してじっくり保育を行えるのは、病児保育ならではのメリットと言えるでしょう。
また、病児保育では子どもを安静な状態で過ごさせる保育が求められるため、室内で静かに保育を行います。外遊びや体を動かす活動などはしないので、体力的な負担は軽いです。
持ち帰り仕事がない
病児保育士には持ち帰り仕事はほとんどありません。病児保育を行う施設では、発表会や運動会などの行事がなく、クラスの指導計画の作成も必要ありません。一般的な保育園では、発表会のための衣装製作や行事で使う小物などを用意したり、クラスの指導計画を毎月作成したりと、子どもの保育以外の仕事がたくさんあります。
病児保育士には子どもの保育以外の仕事が少ないため、時間内に仕事を終わらすことが可能です。残業や持ち帰り仕事はほぼありません。
さまざまな子どもと関われる
病児保育はさまざまな子どもが利用します。通常の保育では利用する子どもが限られているのに対して、病児保育では多くの子どもと関われます。
多くの子どもと関わるので、保育士としてのスキル向上にもつながるでしょう。担当する子どもの年齢層もバラバラなので、一人一人に合った保育を考えなくてはいけません。自ずと保育の幅が広がり、保育の引き出しも増えていくでしょう。
これまでに出会ったことのない子どもと関わることで、保育士としてより多くの経験を積むことができ、今後のキャリアにも活かせることでしょう。
病児保育士のデメリット
病児保育士のメリットだけではなく、デメリットも押さえておきましょう。病児保育士のデメリットを3つご紹介します。
- 医療知識が必要
- 臨機応変な対応が求められる
- 子どもの成長に関わる機会が少ない
下記では、それぞれのデメリットについて解説します。
医療知識が必要
病児保育士は、病気の子どもを安静に過ごさせ、回復に向かうように努めなければなりません。子どもは自分の症状をうまく伝えられないので、病児保育士が子どもたちの病状をよく観察し、適切にケアする必要があります。そのためには、医療知識が不可欠です。
臨機応変な対応が求められる
子どもの体調は急変する場合もあります。子どもの健康状態を観察し、臨機応変な対応が求められます。時にはすぐに受診を必要とすることもあるかもしれません。子どもの健康状態から正しい対処法を選択するのは、プレッシャーもかかるでしょう。
子どもの成長に関わる機会が少ない
保育士の中には、子どもの成長をやりがいに感じる人も多いでしょう。病児保育の目的は、病気の子どもを安静に過ごさせ、回復に向かわせることです。子どもの成長に関わりたいという人には、物足りなく感じるかもしれません。
まとめ
ここまで病児保育士の仕事内容や待遇・メリットとデメリットについてご紹介しました。病児保育士は、少ない人数の子どもへの保育ができ、一般の保育士よりも残業や持ち帰りがないというメリットがあります。しかし一方で、病気の子どもを預かるうえでの医療知識や高度なスキルなどが必要で、大変な仕事とも言えるでしょう。
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