保育士の悩み

保育士は残業代が出ないのが当たり前!?未払い分を請求する方法も解説

「残業代が出ない保育園は多いの?」
「どうして保育士は残業代が支払われにくいの?」

保育士は残業が多いイメージのある職種です。この記事を書く筆者も、保育士として8年務めたなかで残業が当たり前になっている職場で働いた経験があります。

なぜ残業や残業代の未払いが浸透しているのか気になる方もいるでしょう。

そこで本記事では、保育士の残業事情を徹底解説します。残業代が発生するケースや請求方法も紹介するので、残業代の未払いで困っている方はぜひ参考にしてみてください。

片野秋子のプロフィール

保育士の残業が減らない理由

そもそもなぜ保育士の残業はなかなか減らないのでしょう。

考えられる理由は2つあります。

  1. 保育士の人手不足
  2. 労働時間内に終わらせるのが難しい仕事量

1つずつ順番にみていきましょう。

理由①保育士の人手不足

保育士が不足している職場は、一人あたりの業務負担が重くなり残業になりやすいです。

以下は、厚生労働省が公表している、保育士の人手不足感が予測できる有効求人倍率を示したグラフです。

保育士の求人倍率(青色のデータ)は、令和3年から過去10年ずっと1を切っていません。人手不足の課題が長期で続いているのが予測できます。

保育士が1人あたりで対応する子どもの数が多い環境に、人手不足感を覚える保育士も少なくありません。

職場の人員は、以下のとおり国の定めた配置基準(子どもの年齢ごとに定められた最低限必要な保育士の数)をもとに決められています。

  • 0歳児…3:1(子ども3人に対し保育士1人)
  •  1・2歳児 …6:1(子ども6人に対し保育士1人)
  • 3歳児 …20:1 (子ども20人に対し保育士1人)
  • 4歳以上児 30:1(子ども30人に対し保育士1人)

出典:厚生労働省「児童福祉施設最低基準

この設定に「子どもたちとゆっくり向き合えない」「もっと割合を増やしてくれないとクラスを円滑に回せない」と不満をもつ保育士は多いです。

片野秋子

配慮が必要な子がいるクラスや職員が欠席した日は、人手不足感をより強く感じるでしょう。

人手不足の職場だと、日中は子どもの保育で手一杯になり、ほかの業務が後回しになりがちです。手を付けられなかったぶんは子どもが帰ったあとに着手するほかなく残業になりやすいでしょう。

理由②労働時間内に終わらせるのが難しい仕事量

保育士は子どもの保育だけでなく、書類を作成したり、制作物を作ったりと複数のタスクを並行して進めなくてはなりません。

本来であれば、子どもの保育とその他の業務、それぞれの仕事時間の確保が必要です。しかし、1日中子どもの保育から抜けられない体制を組んでいる保育園は少なくありません。そうなると、ほかの業務をためておくしかなく、残業する習慣がついてしまうのでしょう。

厚生労働省が実施した保育士の退職理由の調査結果をみてみると「仕事量が多い」の項目が上位にきていました。

この結果からも、多くの保育士が仕事量の多さに悩みを抱えているのがわかります。

業務を減らしたり、業務に取り組む時間を確保したりしなければ、保育士の残業はなかなか減らないないでしょう。

保育士の残業代が未払いになる原因

残業代が未払いになりやすいのは、保育園ならではの環境にも原因があります。

  1. 労働時間が正しく管理されていない
  2. 「サービス残業・持ち帰り仕事するのが当たり前」の風習が残っている
  3. みなし残業時間を超えた残業代が支払われない

1つずつ順番にみていきましょう。

原因①労働時間が正しく管理されていない

労働時間が正しく管理されていない保育園は少なくありません。

例えば以下のような状況です。

  • タイムカードが存在しない
  • タイムカードの定時打刻を強制される

そもそもタイムカードがなければ、出勤時刻・退勤時刻が記録されないため、残業したかどうかの証拠も残せません。

片野秋子

労働時間を自己管理できる体制がなければ、残業時間を正式に把握するのは不可能です。園長や事務員が労働時間を管理している保育園は、残業をうやむやにされやすいでしょう。

また「定時になったらタイムカードを打刻してね」と強制する保育園も存在します。打刻後に労働したぶんは記録に残らないので、残業したことが証明できません。

労働時間を正確に記録できる体制・設備がない保育園は、残業代の支払いはおろか残業の管理さえもずさんな環境といえます。

原因②「サービス残業・持ち帰り仕事するのが当たり前」の風習が残っている

今は緩和されつつありますが、保育園は「サービス残業・持ち帰り仕事するのが当たり前」の風習が定着しやすい職場です。

残業に対する問題意識がそもそも薄いため、残業している職員がいても早く帰らせる努力をしません。

組織が根本的に意識を変えない限り、残業が正当に扱われず、残業代を支給してもらうのは困難といえるでしょう。

片野秋子

以前働いていた保育園は「子どもたちのために残って仕事をする=偉い」と残業が美徳化されていました。そのような環境下では残業代をもらえるかどうかの前に、残業を減らすのも難しいと感じました。

以下の記事では、保育士の残業事情について詳しく解説しているので、詳細が気になる方はぜひチェックしてみてください。

手で顔を覆い悩む保育士
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原因③みなし残業時間を超えた残業代が支払われない

みなし残業代とは、あらかじめ一定の残業時間を固定して、月の給与に加算して支給する制度のこと。

たとえば、月10時間の残業を見込んでいる場合、10時間分の残業代が毎月の給与に追加されます。

固定時間を超えて労働させた場合、事業者は労働者に超過分の残業代を支払わなくてはなりません。しかし「すでに残業代を払っている」という認識から、超過労働に対する管理が甘い保育園も少なくありません。

残業が多い保育園はあっという間に固定時間を超えてしまう可能性があるので、しっかり管理されていなければ残業代の未払いが発生します。

保育士が残業代を請求できるケース3選【残業代の計算方法も解説】

保育士が残業代を請求できるケースを紹介します。

  1. 所定労働時間を超えて仕事をしたとき
  2. 自宅で作業をしたとき
  3. 休憩時間に業務をおこなったとき

ケース①所定労働時間を超えて仕事をしたとき

労働基準法で、労働時間の上限は1週間に40時間、1日8時間と定めています。これを超えて労働をさせた場合、事業者は労働者に1.25倍以上の割増賃金を残業代として支払わなくてはなりません。

(時間外、休日及び深夜の割増賃金)
第三十七条 使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

労働基準法 e-Gov法令検索

たとえば、休憩を除く9:00〜18:00の8時間労働の場合、18:00から1分でも過ぎて労働した時点で1.25倍以上の割増賃金が発生します。

【残業代の計算例】
月給20万円(通勤手当や住宅手当などを除く)で、所定労働時間8時間、所定労働日数20日の保育士が1時間の残業をした場合

1時間当たりの賃金=20万円÷(8時間×20日)=1,250円
残業代=1,500円×1.25×1時間=1,562円

通常契約で1日8時間以上働いているのに残業代が支給されていない方は、損をしています。労働者の権利を守るためにも、残業を正式に扱ってもらえる環境に身をおくのがよいでしょう。

片野秋子

私もサービス残業が習慣化していた保育園で長く働いていたので、もらえるはずの残業代を受け取れず悔しい思いをした経験があります。労働時間の管理がしっかりしている保育園に移ったあとは、残業に関する悩みから解放されました。

ケース②自宅で作業をしたとき

自宅で作業した場合も、立派な業務に該当するため労働時間外の仕事として残業代を請求できます。

残業として対応してもらうためには「労働時間内に業務が片付かなかったので自宅で仕事をしてもよろしいですか?」と上司に申告し、許可をもらわなければなりません。

黙って仕事を持ち帰れば自主的な作業として見なされかねないので、しっかり上司に申告しましょう。

ケース③休憩時間に業務をおこなったとき

休憩時間を取らずに業務を続けた際も、残業代を請求できます。

休憩時間がしっかり確保されず、休みなく働く保育士は少なくありません。

休憩時間を削って仕事をすると、1日8時間の所定労働時間を超えるため残業代が発生します。

そもそも、労働基準法によりフルタイムで8時間働く保育士は、少なくとも1時間の休憩。パートやアルバイトなど時短で6時間以上働く保育士は、最低45分の休憩をとることが義務付けられています。

第三十四条 使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。

労働基準法 e-Gov法令検索

残業代未払いに加え、休憩時間を確保していない保育園は、労働環境が悪いといえるでしょう。

以下の記事では、保育園の休憩なし事情を解説しているので、気になる方はぜひ合わせてご覧ください。

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保育士が残業代を請求する方法

保育士が残業代を請求する方法を解説します。

  1. 保育園に請求する
  2. 労働基準監督署に相談する

方法①保育園に請求する

まずは、保育園に直接請求する方法です。

「残業代を支払ってください」と要望をストレートに伝える方法はおすすめしません。印象がよくないうえに、急に言われた上司も対応に困ります。

上司が状況判断しやすいように、以下の情報を集めたり、自分の考えをまとめたりしておきましょう。

  • 1ヶ月分の残業時間
  • 残業時間にしている業務
  • 自分で考えた改善案

事前準備を万全にしておけば、想いが伝わって真剣に考えてくれたり、提示した案をもとに話し合いがスムーズに進んだりしやすいです。

しかし、話をしたからといって要望が通るとは限りません。反対に対応するのが面倒と捉えられれば、態度が冷たくなって上司との関係性が悪化する可能性もあります。

リスクを加味しながら行動すると、もしものダメージを受けたときに冷静に対応できるでしょう。

方法②労働基準監督署に相談する

労働基準監督署に相談してみる手もあります。

労働基準監督署は、事業者側が違法な労働を行わないように監視・監督する部署であり「残業代の未払い」への対応もおこなっています。

証拠がないと担当者も動けないので、残業をした事実がわかる情報を集めておきましょう。

明らかに違反行為であると判断されれば、保育園に立ち入り調査が始まります。そして、問題が発覚すれば、事業者側を指導・勧告します。

労働基準監督署は、未払い分の残業代回収まではおこなってくれません。あくまで監督者としての立ち位置なので、してくれるのは指導・勧告までだと覚えておきましょう。

とはいえ、国が管轄する部署なので対応に入れば効果は大きいです。

残業代の請求に応じてもらえなかったら転職するのもあり!

行動を起こしてみたけど思うような結果が得られなかったり、なかなか行動に移せなかったりする場合は、転職するのもありです。

「残業代に予算をさけない…」という考えが上司のなかにあれば、冷たい態度で接してくる可能性があるでしょう。また、残業代はお金が絡んでセンシティブな内容のため、話を切り出す勇気をなかなかもてない方もいるはずです。

残業の対応がしっかりしている保育園に転職すれば、残業代請求における心身的負担を受けることはありません。未払いを諦めるのは悔しいですが、働きやすい職場に身を置くことで気持ちが楽になるでしょう。

残業の少ない保育園や、残業の対応がしっかりしている保育園をお探しの方は、ぜひ弊社「しんぷる保育」にご相談ください。

弊社は保育士特化型の転職エージェントを運営している人材紹介会社です。

転職先に求める条件を丁寧にヒアリングをしたのち、ぴったりの求人をご紹介いたします。その後の面接日程の調整や保育園との諸連絡なども弊社が仲介させていただき、内定までの間あなたの転職活動をフルサポートさせていただきます。

弊社は担当者が実際に保育園まで行って現場の情報をリサーチしています。そのため、職場・職員の雰囲気や子どもたちの様子といった内部情報も詳しくお伝えできます。

「残業した場合はどんな対応をしているの?」「残業しないために具体的にどんな工夫をしているの?」といった気になる情報も、弊社が保育園に問い合わせて確認し、お答えいたします。

どんな求人があるか確認するだけでもOKです。ぜひお気軽にお問い合わせください。

まとめ:保育士は残業代がきちんと請求できる保育園で働こう!

労働時間外に頑張って働いたぶんは、残業代という形で評価される義務が労働者にはあります。

サービス残業や持ち帰り仕事が続く状況を当たり前に捉えず、残業をしっかり管理してもらえる環境を作っていきましょう。

「色々試してみたけど、変化が期待できない…」という場合は、転職する手もあります。はじめから残業の少ない保育園に転職すれば、状況を変えるための負担もかからないでしょう。

残業の少ない保育園を探したい方は、ぜひ弊社「しんぷる保育」にご相談ください。保育士が働きやすい環境の整った保育園の求人を厳選し、ご紹介させていただきます。

相談だけでも無料なので、まずはお気軽にお問い合わせください。

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