「保育士の労働環境の現状が知りたい」
「保育士の労働環境は今後改善されるの?」
このような疑問に答えていきます。
慢性的な人手不足の問題や業務量の多さから保育園は労働環境が悪質になりやすいです。ブラック保育園と呼ばれるような職場に入社しないためにも、できる対策を知っておくのが大切でしょう。
この記事を読めば、保育士の労働環境の現状を把握して自分にできる対策がわかります。改善に向けた国の取り組みも解説しているので、今後の変化に興味がある方はぜひ最後までご覧ください。
保育士の労働環境の現状
では早速、保育士の労働環境の現状をみていきましょう。
- 保育士の給与は全職種の平均を下回る
- 残業や持ち帰り仕事が多い
- 一人で抱える仕事量が多い
- 人手不足で一人にのしかかる負担が大きい
- 人間関係がこじれやすい
現状①保育士の給与は全職種の平均を下回る
以下は、厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査」の資料を参考に全職種と保育士の平均給与をまとめた表です。
保育士の年収は全職種の年収より80万円ほど低い結果でした。
保育士は子どもの命を預かる責任の重い仕事です。また、保育ニーズの変化により対応する業務が年々増えているため「もう少し給与に反映されてもいいのでは…」と考える保育士は多いでしょう。
- 保護者支援強化による家庭のサポート業務増加
- 保護者の働き方にあわせた延長保育・休日保育の増加
- 障がいをもつ子どもや外国籍の子どもの受け入れ増加
厚生労働省が元保育士の退職理由を調べたところ、「給料が低い」の回答数が16種類の退職理由のなかでも2番目に多かったです。この結果からも、現状の給与に満足していない保育士がたくさんいるのがわかります。
現状②残業や持ち帰り仕事が多い
厚生労働省の調査によると、保育士の平均残業は月3時間です。月に20日間出勤した場合を想定して計算すると、1日の残業時間は約10分です。
この調査結果は、残業を申告している保育園のデータのみの結果なので、申告していない保育園のデータを含めるとさらに長時間になるでしょう。
働き方改革の影響により、残業削減の取り組みを実施する保育園も増えてきました。しかし、残業や持ち帰り仕事が習慣化している保育園もまだまだ多いのが現状です。
SNSや口コミ掲示板には、保育士の残業に関して以下のような声が寄せられています。
- 残業しても残業代がつかない…
- ほぼ毎日サービス残業しています
- 保育園に泊まり込んで仕事をする日もあります
- 残業・持ち帰り仕事をしても手取りは15万ほど…
- 1ヶ月の残業時間が多すぎる!保育士が少なくて仕事の負担が大きい
- 朝早くから夜遅くまで保育園にいます。体調を崩すこともしばしば…
- 遅くまで残業する日々。そして仕事の持ち帰りも多く疲れ切ってしまいました
※2022〜2024年のデータ
わたしも残業が習慣化している保育園で働いていたことがあります。行事間際は、日付を超えるくらいまで職場で仕事をしていました。
長時間労働が当たり前となっている環境で働き続けると疲れがたまって、心身に支障をきたしかねません。一刻も早い労働環境の改善が求められるでしょう。
以下の記事では、保育士の残業の実態をまとめているので、詳細が気になる方はぜひあわせてご覧ください。
現状③一人で抱える仕事量が多い
保育士がおこなうのは子どもの保育だけではありません。
- 保護者支援
- 行事の準備
- 清掃・整理整頓
- 連絡帳や書類の記入
- 制作物の準備・仕上げ
組織全体でタスク管理を徹底することで、労働時間内に業務を終わらせられる可能性はあります。しかし、人手不足やタスク管理不足により作業時間が確保できず、残業が発生する保育園は多いでしょう。
労働時間内で業務が片付けられないのであれば、適切な仕事量とはいえません。
以下のグラフからもわかるとおり、実際に「仕事量の多さ」が理由で退職をした保育士もたくさんいます。
出典:厚生労働省「保育士の現状と主な取組」
保育士が働きやすい労働環境にしていくためには、業務負担を軽減する取り組みが必要不可欠といえるでしょう。
現状④人手不足で一人にのしかかる負担が大きい
保育業界は慢性的な人手不足です。以下は、人手不足状況を指し示す「有効求人倍率」のデータです。
求職者1人につき何件の求人があるのかを示した数値のこと。有効求人倍率が1を上回れば求職者よりも求人数が多いことを指すので、人手不足の状況であると判断できます。
出典:厚生労働省「保育士の有効求人倍率の推移(全国)」
保育士のデータ(青色グラフ)は、令和3年から過去10年で1の数値を切ったことがありません。人手不足の状態がずっと続いているのがわかります。
人手不足の状態だと残業や持ち帰り業務が増加し、心身の負担が大きくなります。また、一人当たりの担当する子どもの数が増え、きめ細やかな保育ができなくなるでしょう。
人手不足の問題は保育士の離職率上昇や保育の質低下など、あらゆる悪循環を誘発するため早めの対策が求められます。
現状⑤人間関係がこじれやすい
保育士は女性が多い職場なので、人間関係のトラブルが起きやすい傾向にあります。
- 派閥ができやすい
- 噂話や悪口が広がりやすい
- 独裁的な人物が生まれやすい
保育園は外部との接触が少ないうえ、1日の大半を室内で過ごす保育園が多いため閉鎖的な空間といえます。そのような環境が、人間関係のこじれを助長させてしまうでしょう。
元保育士の退職理由として「職場の人間関係」がトップにあげられています。
出典:厚生労働省「保育士の現状と主な取組」
保育士の人間関係の問題は、離職率に大きく影響しているのがわかるでしょう。
新人の頃、先輩保育士に高圧的な指導を受けて退職を検討した時期があります。人間関係の悩みは大きなストレスを抱えると身をもって体験しました。
以下の記事では、保育士の人間関係が悪化しやすい原因や対処法をまとめているので、気になる方はぜひチェックしてみてください。
【2024年最新】保育士の労働環境を改善するために国が実施した施策
ここからは、労働環境を改善するために国が実施した施策をみていきましょう。
大きな施策は、以下の2つです。
- 給与加算の制度導入
- 保育士の配置基準の見直し
1つずつ順番に解説していきます。
累計+23%の給与改善および月額最大4万円の給与加算が実現
国は保育士の賃金の底上げを図るため、平成25年度以降、3種類の加算制度(処遇改善等加算I〜Ⅲ)を実施してきました。
制度の種類 | 開始時期 | 制度の内容 |
---|---|---|
処遇改善等加算Ⅰ | 2015〜 | 全ての職員を対象に、平均経験年数・キャリアパスの構築等に応じ加算率(最大19%)を設定し処遇改善を実施 |
処遇改善等加算Ⅱ | 2017〜 | 中堅職員や専門リーダーを対象に、技能・経験に応じて月額4万円又は月額5千円の処遇改善を実施 |
処遇改善等加算Ⅲ | 2022〜 | 全ての職員を対象に、賃上げ効果が継続される取組を行うことを前提に、月額9千円の処遇改善を実施 |
出典:こども家庭庁「公定価格の処遇改善等加算Ⅰ~Ⅲの一本化について」
加算対策の効果で保育士の給与は、以下の図のとおり累計+ 23%の給与改善および月額最大4万円の給与加算が実現しています。
出典:こども家庭庁「公定価格の処遇改善等加算Ⅰ~Ⅲの一本化について」
実際にどれほどの恩恵が受けられるかを「手取り15万円」のケースに当てはめてみていきましょう。
【条件】
- 保育士4年目
- キャリアアップ研修により「乳児保育の職務分野別リーダー」に任命
【処遇改善等加算の加算分】
- 処遇改善等加算Ⅰ:+12%加算(経験年数3年の基礎分5%+園が7%加算の基準を満たしている)
- 処遇改善等加算Ⅱ:職務分野別リーダーの任命により月額5,000円加算
- 処遇改善等加算Ⅲ:9,000円加算
【計算】
150,000円(手取り)+18,000円(Ⅰ:12%加算分)+5,000円(Ⅱ:職務分野別リーダー手当)+9,000円(Ⅲ)=182,000円
※配当金額は一律ではなく、園が分配金を自由に設定できるケースもあるため変動する可能性あり
処遇改善等加算により、手取り15万円だった給与が18万2,000円。年収にすると38万4,000円のアップです。
このように具体的な数値に落としてみると保育士の処遇改善は確実に進んでいるのがわかります。保育士の処遇改善の見直しは今も進められているため、今後もさらなる改善に期待がもてるでしょう。
保育士の配置基準が76年ぶりに見直された
政府が考案した「こども未来戦略」において、保育士の配置基準の一部見直しが盛り込まれました。保育士の配置基準とは、国が定めた「保育士ひとりが受けもつ子どもの人数」です。
現在、公表されている令和6年度以降の配置基準の対応は以下のとおりです。
子どもの年齢 | 従来の配置基準 (子どもの数:保育士の数) | 今度 |
---|---|---|
0歳児 | 3:1 | 変更なし |
1・2歳児 | 6:1 | 1歳児.5:1(令和7年度以降で計画中) |
3歳児 | 20:1 | 15:1(令和6年度より) |
4・5歳児 | 30:1 | 25:1(令和6年度より) |
出典:こども家庭庁「令和6年度こども家庭庁予算案のポイント」
令和6年度から保育士の配置基準が4・5歳児は30:1から25:1、3歳児は20:1から15:1に設定が変わりました。令和7年度以降は、1歳児の配置基準を6:1から5:1に改善する方向で進めるそうです。
保育士の配置基準の見直しは実に76年ぶりです。これは、保育の質向上と保育士の働きやすさの実現に向けた大きな一歩といえるでしょう。
保育士が労働環境を変える方法3つ
保育士が労働環境を変えるためにできることを解説していきます。
- 業務内容を見直す
- 小さな働き方改革をおこす
- 転職する
方法①業務内容を見直す
仕事に追われ残業や持ち帰り仕事をしている状況であれば、業務内容の見直しからおこないましょう。
業務の効率化・簡略化により、残業せずとも勤務時間内で仕事が片付けられる可能性があるからです。
改善ポイントを以下にまとめました。
- 連絡帳や活動日誌の作成をパート保育士にも分担する
- ICTシステムを導入し、書類作成や情報管理を効率化する
- 制作物のクオリティにこだわりすぎず、手間の少ない方法を選ぶ
- イベント・行事では前年に使用した材料や作品を積極的に再利用する
よく見直してみると効率化・簡略化できる業務は意外と多くあります。
業務改善できる部分がないかつねにアンテナを張って、負担となっている業務をどんどん削減しましょう。
方法②小さな働き方改革をおこす
労働環境を変えたいなら、小さな働き方改革をおこしてみるのも有効です。
「こんなに残業する必要はないのでは?」
「保育者の動きを見直したら事務時間を確保できるのに…」
自分が感じている働き方への疑問や改善案は、ほかの人も同じように考えている可能性があります。
そのような場合、「残業をしない環境を作っていきませんか?」「保育者の動きを見直して事務時間を確保してみませんか?」という一声により賛同者が増え、状況が変わるケースも珍しくありません。
自分が発信者となって小さな働き方改革をおこなえば、やがて大きな変化を生み出すきっかけとなるでしょう。
方法③転職する
色々試してみても改善が難しいのであれば、転職を検討するのも一つの選択肢です。
たとえば、人手不足のような根本的な問題は、個人の力で改善するのは難しいです。また、組織自体が労働環境に対する意識が低いと、いくら奮闘しても思うような結果を得にくいでしょう。
労働環境が整っている保育園には、以下のような特徴があります。
- 残業が少ない
- 職員の数にゆとりがある
- ICTシステムを導入している
- 休憩時間をしっかり確保している
- 役職・経歴関係なく自分の意見がいえる
現在の職場の労働環境で疲弊しているなら、すでに環境が整っている保育園への転職を検討してみてください。自分にあった働きやすい環境で働けば、保育士としてのやりがいをより感じられるでしょう。
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残業が常態化している保育園や労働環境に対する意識が低すぎる職場は、個人での対応には限界があります。改善策を試みても効果がみられない場合は、転職を検討するのも大切な選択肢です。
労働環境の悪い職場で働き続けると心身的に負担がかかり、体調を崩しかねません。健康的に働くためにも、我慢せずに環境から離れる道も視野に入れてみましょう。
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まとめ:保育士は労働環境のよい職場を求め続けよう!
保育士は全職種と比べると年収が低いほか、残業の常態化や人間関係のトラブルなどの課題が多く労働環境が悪くなりやすい傾向にあります。
リサーチに注力して職場を吟味しなければ、ブラック保育園に入社してしまうリスクを招きかねません。自分らしく働き続けるためには、保育士を大切にした労働環境のよい職場を貪欲に探す姿勢が大切でしょう。
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