保育士が受け取れる手当の種類は?
対象者や支給額の相場も教えてほしい
保育士の手当は大きくわけて「保育園から支給される手当」「国から支給される手当」「自治体から支給される手当」の3つのタイプがあります。
手当は保育士の収入を増やす主要な要因ですが、支給条件や支給額は手当ごとに異なります。より良い待遇を得るためにも、正しい知識をもっておくのが大切です。
本記事では保育士がもらえる代表的な手当を紹介します。対象者や支給額の相場も解説していくので、手当を活用して収入アップを目指したい方は参考にしてみてください。
保育士が受け取れる手当には3タイプある
保育士が受け取れる手当は大きくわけて以下3つのタイプがあります。
タイプ | 手当の例 |
保育園から支給される手当 | ・資格手当 ・役職手当 |
国から支給される手当 | 処遇改善手当 |
自治体から支給される手当 | ・上乗せ補助金 ・一時金 |
基本給に手当が加算されると、給与の底上げにつながります。基本給が低めの保育園でも、手当が充実していれば、実収入が増えるケースも珍しくありません。
手当は保育士の待遇を左右する大事な要素でもあるので、就職や転職をする際は手当の種類や支給条件、支給額などを細かくチェックしましょう。
園から保育士に支給する8つの手当
まずは、保育園が独自に支給する代表的な8つの手当を紹介します。
・資格手当
・役職手当
・特殊業務手当
・残業手当
・通勤手当
・住宅手当
・扶養手当
・その他手当
順番に見ていきましょう
資格手当
資格手当とは、保育士資格や幼稚園教諭免許をもつ保育士に支給される手当です。相場は月額5,000円から15,000円程度と幅があります。
資格手当を支給しない保育園もあるので、資格をもっているからといって必ずしも受け取れるとは限りません。また、基本給に元から含まれているケースもあります。
確実に手当を受け取りたいなら、手当の有無や支給額について保育園に直接確認してみましょう。
役職手当
役職手当とは「園長」「主任」といった責任のある役職に対して支給される手当です。
キャリアアップ研修の導入により、保育園には新たに「副主任保育士」「専門リーダー」「職務分野別リーダー」という3つの役職が設けられ、役職手当を受け取れる人数や機会が増えました。
このほかにも「クラスリーダー」「乳児リーダー/幼児リーダー」などの役職があります。
支給額は園によって異なり、相場は数千円から数万円と幅があります。責任の重い役職であればあるほど、支給額も高くなる傾向にあります。
特殊業務手当
特殊業務手当とは、運動会や発表会といった行事・イベントに対して支給される手当です。
行事やイベントが近くなると保育士は通常の業務に加え、行事の準備や打ち合わせ、リハーサルといった業務が増えます。特殊業務手当とは、このような行事・イベントの準備にかかる時間や労力の対価として支給されます。
特殊業務手当の支給額の相場は、月額3,000円〜10,000円程度です。月給の中に特殊業務手当を含んでいる保育園もあるので、事前に確認しておくのが良いでしょう。
特殊業務手当が支給される保育園で働いた経験があります。行事の準備で頑張った成果が収入面でも反映され、仕事への意欲が高まりました。
残業手当
残業手当は、所定労働時間を超えて働いた際に支給される手当です。
残業手当の支給については、労働基準法で明確に定められています。労働時間を延長して働かせた場合、事業者は労働者に1.25倍以上の割増賃金を残業代として支払わなければなりません。参考:e-Gov法令検索|労働基準法第三十七条
通常の残業手当とは別に「みなし残業手当」または「固定残業手当」と呼ばれるものもあります。この残業手当は、一定時間の残業を見越して、あらかじめ月給として支払う制度です。
保育園の中には、勤務時間の管理が厳密でなく、正規の方法で残業代を支払わない園もあります。これは労働基準法に反しており、望ましい職場環境とはいえません。
以下の記事では、保育士の残業代事情について詳しく解説しています。残業代の未払いが発生しやすい背景も紹介しているので、残業に関して悩みを抱えている方はあわせてご覧ください。
通勤手当
通勤手当は、通勤で利用するバス代・電車代や車通勤でかかるガソリン代などに対して支給される手当です。
全額支給の保育園もあれば、上限を設定している保育園もあります。上限を決めている場合の支給額相場は月額20,000円〜50,000円程度です。
自宅と職場の距離が離れており、通勤に費用がかかる方はとくに、支給条件や支給額をよく確認しましょう。通勤手当の有無、全額支給または一部支給などの条件によって、金銭的負担が大きく変わってくるからです。
車通勤の方は、駐車場代は手当の対象か自己負担なのかも確認しましょう。
住宅手当
住宅手当は、賃貸物件を借りている保育士に対して家賃を補助する手当です。
支給条件は各園で異なり「単身者限定」「○年間のみ」といった条件を設けている保育園もあります。
住宅手当の相場は月額5,000円から3万円程度です。保育園によっては「家賃の○%」と規定を設けている保育園もあります。
賃貸物件を借りている方は、自分が手当の対象者であるか、またいくら手当を支給してもらえるのかを確認しましょう。
家賃補助に関しては、国が実施する「保育士の借り上げ社宅制度」もあわせて検討してみてください。国や各保育園が定めている要件を満たせば、最大月額8万2,000円の家賃補助が受けられます。
住宅手当よりも借り上げ社宅制度のほうが支給額が高く設定されているので、家賃の負担を少しでも軽減したいなら、借り上げ社宅制度の利用を前向きに考えましょう。
わたしは関東で仕事をしていたときは必ず「保育士の借り上げ社宅制度」を利用していました。関東は家賃相場が高い傾向にありますが、家賃補助のおかげで金銭的な負担が最小限で済み助かりました。
以下の記事では保育士の借り上げ社宅制度の概要や支給条件を解説しています。借り上げ社宅制度を利用するメリットも紹介しているので、参考にしてみてください。
扶養手当
扶養手当は、家族がいる保育士に支給される手当です。主な対象者は、子どもがいる家庭や、配偶者がいて自身が家計を支えている立場にある方です。
またパートやアルバイトといった非正規雇用で収入が少ない方も対象となる場合があります。
以下は、扶養手当の規定例です。
・子ども一人当たりにつき月額5,000円 ・扶養が必要な配偶者がいれば月額5,000円 ・非正規雇用で年収130万円以下の方は月額5,000円 |
これらの金額や条件はあくまで一例です。詳しくは就職・転職先の園に直接確認してみてください。
その他手当
これまでに紹介した手当以外にも、まだ種類があります。実際にある手当の一部を以下の表にまとめました。
手当 | 内容 |
調整手当 | 職員間の給与バランスを調整するために支給される手当 |
地域手当 | 地域の物価高を考慮して支給される手当 |
休日勤務手当 | 休日出勤に対する特別手当 |
早出・遅番手当 | 通常勤務時間外における労働の負担を考慮した手当 |
研修手当 | 研修費を補助する手当 |
会議手当 | 時間外の会議参加に対する特別手当 |
被服手当 | 業務用衣服の購入費用を補助する手当 |
くりかえしですが、支給条件や支給額は各園で異なります。就職・転職の際は事前によく確認しましょう。
国から保育士に支給する処遇改善手当
次に国から支給される処遇改善手当について解説します。
国が実施する処遇改善等加算は、保育士の人材確保および資質の向上を目的に創設された制度で、現在「処遇改善等加算Ⅰ」「処遇改善等加算Ⅱ」「処遇改善等加算Ⅲ」の3種類があります。
それぞれの目的や内容を詳しく見ていきましょう。
処遇改善等加算Ⅰ
処遇改善等加算Ⅰは、保育士の平均勤続年数に応じて補助金が支給される加算制度です。また、処遇改善の取り組みが認められた保育園に対しても補助金が出ます。
処遇改善等加算Ⅰの対象となるのは、認可保育園に勤める非常勤職員を含むすべての保育士です。
加算率は大きくわけて以下の2区分があり、それぞれの加算率は以下のとおりです。
区分 | 加算率 |
基礎分 | 保育士の平均勤続年数に応じて2〜12%(月額約10,000〜38,000円相当)が給与に上乗せされる。 |
賃金改善要件分 | 賃金改善が認められた保育園に加算率が追加される。加算率は平均勤続年数に応じて変動し、11年未満で一律6%、11年以上で一律7%となる。 |
参考:こども家庭庁 |施設型給付費等に係る処遇改善等加算について
基礎分と賃金改善要件分の加算率を合計すれば、保育士の給料に8〜19%分の補助金が加算されることになります。
補助金の配分は各保育園が自由に設定できるため、処遇改善等加算Ⅰにおける手当の支給額は各園で異なりますが、おおよそ月額1万円〜4万円程度です。
処遇改善等加算Ⅰの恩恵を最大限に受けたい方は、複数の求人を比較して処遇改善加算手当が高い保育園をチェックするのが良いでしょう。
処遇改善等加算Ⅱ
処遇改善等加算Ⅱは、保育士のキャリアアップと処遇改善を目的とした加算制度です。保育現場では「キャリアアップ制度」の名で認知されています。
これまで保育園における正規の役職は園長と主任のみでしたが、キャリアアップ制度の導入により新たに「副主任保育士」「専門リーダー」「職務分野別リーダー」の3つの役職が追加されました。
必要な研修を修了し、園から役職を発令されれば、各役職において以下の収入アップが期待できます。
- 副主任保育士: 一人当たり月額最大4万円
- 専門リーダー:一人当たり月額最大4万円
- 職務分野別リーダー:一人当たり月額5,000円
ただし、支給額の配分は保育園が自由に設定できるため、役職に就いたからといって支給額を満額受け取れるとは限りません。また、役職につける人数も各園で上限が定められているため、役職の枠数や支給額については事前に保育園に確認しておきましょう。
キャリアアップ研修の修了効力は全国で有効です。そのため、転職先でポジションが空いていれば、すぐに役職に就いて役職手当を受け取れます。私自身も、この制度を活用して転職直後から役職に就くことができました。
以下の記事では保育士のキャリアアップ研修について詳しく解説しています。キャリアアップ研修を受けるメリットや注意点も紹介しているので、利用を検討している方はぜひ参考にしてみてください。
処遇改善加算Ⅲ
処遇改善等加算Ⅲは、2022年2月から始まった保育士の給料における継続的な引き上げを目的とした加算制度です。
保育士や幼稚園教諭を対象に、申請があった施設において3%程度(月額9千円)の賃金引き上げが実施されます。
処遇改善等加算Ⅲは当初、臨時の制度として導入されました。しかし内閣府は今後も継続的な賃金引き上げを進めていく方針を示しており、令和5年度における保育予算案にも処遇改善等加算Ⅲの継続が盛り込まれています。
参考:こども家庭庁|保育士・幼稚園教諭等処遇改善臨時特例事業の実施について
こども家庭庁|令和5年度 保育関係予算案の概要
各自治体が保育士に支給する手当
最後に各自治体が保育園に支給する手当を見ていきましょう。ここでは1都3県の中から実際に支給されている手当を紹介します。
東京都大田区
東京都大田区では、若年層保育士の支援を目的とした応援手当を支給しています。
支給対象者は経験年月数が交付対象期間(前期:4月〜9月、後期:10月〜翌3月)の初日時点において満5年未満の常勤保育士です。対象者に該当すれば、交付対象期間終了後に最大年間12万円(4〜9月分、10月〜翌3月分として、それぞれ6万円)が支給されます。
また大田区では、中堅・ベテラン層の保育士向けに一時金の手当も支給しています。対象者は、経験年月数(区内保育施設に限る)が交付申請年度の前年度中に満10、15、20、25、30、35または40年のいずれかに達した常勤保育士等です。
対象者に該当すれば、経験年月数が満10、15、20、25、30、35または40年のいずれかに達した年度の翌年度に10万円が支給されます。
参考:大田区|大田区内で働く保育士の皆様へ~令和6年度 大田区保育士応援手当及び一時金~
東京都江戸川区
東京都江戸川区では、5年ごとの節目に10万円の報奨金を支給しています。
勤続5年(5年・10年・15年・20年…)に達した常勤の正社員保育士等を対象として、翌年度に10万円の報奨金が支給されます。
つまり、江戸川区で長く勤務することで、定期的に報奨金を受け取るチャンスがあるのです。
参考:江戸川区|保育士の仕事と暮らしを力強くサポートします!
千葉県船橋市
千葉県船橋市では、市内で働く保育士のために「ふなばし手当」を支給しています。対象者は正規職員に限らず、フルタイムのパートタイマー職員も含まれます。
ふなばし手当では月収と賞与への上乗せがあり、支給額は以下のとおりです。
・月額:43,220円 ・賞与(2回分):83,700円 |
合計すると602,340円、月額換算50,195円の手当が支給されることになります。
参考: 船橋市|ふなっしーも応援!船橋市内の保育園で働きませんか?
神奈川県厚木市
神奈川県厚木市では保育士等就労応援給付金(あつぎ手当)を支給しています。対象者は、同一の保育施設で継続的に就労する常勤保育士等です。
受け取れる支給額は以下のように勤続年数によって異なります。
・勤続年数4年未満:年額15万円 ・勤続年数4年以上10年未満:年額27万円 ・勤続年数10年以上20年未満:年額33万円 ・勤続年数20年以上:年額50万円 |
厚木市の同一保育園で長く勤めれば、支給される年額が段階的に上がっていくのです。また、あつぎ手当では非常勤保育士に対しても一律年額3万円が支給されます。
参考:厚木市|厚木市保育士等就労応援給付金(あつぎ手当)
埼玉県さいたま市
埼玉県さいたま市では、保育士の給与への上乗せ補助をおこなっています。
対象者は常勤保育士等で、1人あたり月額10,500円に加えて、期末手当67,500円分の年俸合計193,500円が補助されます。
参考:さいたま市|保育士の給与に193,500円(年額)の上乗せ補助をしています!
以下の記事では、自治体の補助金が都道府県ごとの給料の違いを生む要因になっていることを解説しています。給料が高い都道府県ランキングも発表しているので、詳細が気になる方はあわせてご覧ください。
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