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保育ママ制度とは?メリットデメリットと必要な資格について解説

疲れた表情をみせる保育士

これまで、児童の預け先として一般的だったのは保育園や幼稚園でした。しかし、近年待機児童が増加し、既存の保育園や幼稚園のみでは対応しきれていないのが現状です。そんな待機児童問題を解消するために、新たに保育ママという制度が始まりました。

今回は、転職を検討している保育士に向けて、保育ママ制度のメリットデメリットや必要資格を中心に解説していきます。保育ママの利用者は徐々に増加しつつあるので、転職先の一つとして検討してみてください。

保育ママはどんな制度?

まずは、保育ママ制度について解説していきます。主な内容については、以下の通りです。

  • 保育ママとは?
  • 保育ママの開業条件
  • 保育ママに必要な資格

上記を解説することで、保育ママ制度の概要が把握できるでしょう。

保育ママはどんな制度?

保育ママは、自宅で子どもの保育をおこなう小規模の保育サービスです。1人の保育ママが保育できる子どもの数は3人が上限で、複数の保育者がいれば子どもを5人まで保育できます。

引用:家庭的保育事業(いわゆる「保育ママ」制度)について

保育ママの開業条件

保育ママを開業する際は、各自治体で定められた条件を満たす必要があります。保育ママを開業するためには、以下のような条件が課せられています。

  • 25歳~60歳程度までの健康な方
  • 月曜日から土曜日の8:00~18:00まで保育できる方
  • 未就学児の子どもがいない方
  • 自宅でペットを飼っていない方
  • 家族に看護や介護が必要ない方

基本的に上記の条件を満たすことで、保育ママとして認定されます。保育ママの正式な認定条件は各自治体で異なるので、一度お住まいの自治体に詳しい認定条件を尋ねてみてください。

保育ママに資格は必要か?

保育ママになるための資格も、自治体によって異なります。多くの自治体では、保育士や看護師などの資格が必要です。しかし、自治体の中には、自治体が指定する研修を受けることで、無資格でも保育ママとして認定される場合もあります。すでに保育士として勤務していれば、必要な資格は満たしていると考えられます。

保育ママの3つのメリット

少人数で保育をおこなう保育ママには、以下のようなメリットがあります。

  • アットホームな保育ができる
  • 通勤する必要がない
  • 自治体のサポートを受けられる

それぞれのメリットを理解して、自分の目指す保育が実現できるか考察してみてください。

アットホームな保育ができる

保育ママと保育園や幼稚園との一番の違いは、預かる子どもの人数です。保育ママでは、預かる子どもの上限は3歳未満の子どもでおよそ3人と定められています。はじめて集団行動する子どもにとっても環境変化が少なく、落ち着いて遊んでくれる可能性が高くなります。

また、3歳未満の子どもは、成長や発達に個人差が大きい時期です。子ども一人ひとりに合わせた遊びや給食を提供できるので、保育園や幼稚園よりも家庭的な保育をおこなえるでしょう。

通勤する必要がない

保育ママは、通勤する必要がありません。そのため、通勤時間やその移動コストを気にせず保育に専念できます。また、子どもたちが過ごしやすい環境を自分で工夫して構築できるのも、保育ママのメリットです。

自治体のサポートを受けられる

保育ママは自治体の認定を受けた制度なので、多くの自治体から補助金やサポートを享受できます。内閣府が発行した小規模保育運営支援事業等の要綱では、補助金について以下の画像のような説明をしています。

引用:小規模保育運営支援事業等の要綱

補助金についても、各自治体で条件が異なるので、直接問い合わせてみてください。

保育ママの3つのデメリット

保育ママには、以下の3つのメリットがあります。

  • 開業手続きに時間がかかる
  • ケガや病気のリスクがある
  • 経理の知識が必要になる

それぞれのデメリットについて、詳しく解説していきます。

開業手続きに時間がかかる

保育ママとして認定を受けるためには、自治体の定めた条件を満たす必要があります。また、事前の研修が必要となる自治体もあるため、開業までの手続きや準備に時間がかかる点がデメリットです。

自治体の審査は段階的におこなわれるので、都度指摘を受けてしまうと開業までに1年以上かかる場合もあります。すぐに開業したい、すぐに働きたいと考えている保育士には、保育ママのデメリットが大きくなる可能性があります。

ケガや病気のリスクがある

保育ママにとってとくに注意したいのが、子どものケガや急な病気です。保育中に万が一転倒したりおもちゃでケガしてしまったりした場合、保育士がすぐに対応しなくてはいけません。急な発熱や嘔吐が起きた際には、ほかの子ども達に配慮しながらの対応が必要です。

1人で運営している保育ママでは、この急なケガや病気の対応を誤ると保護者から叱責を受けたり、子どもの体調不良を悪化させたりするリスクがあります。あらかじめ緊急時の対応をマニュアル化し、落ち着いた対応ができる環境を整えておきましょう。

経理の知識が必要になる

保育ママとして事業を継続するためには、経営に関する知識や技量が必要です。個人事業主には、保育士としての業務のほかに、入金や出金の管理や確定申告などの経理業務も必要です。

保育士として仕事をする片手間で経理をおこなうのは時間的にも負担が大きく、デメリットといえます。保育ママとして開業を検討している保育士は、事前に会計ソフトの操作や税についての知識を付けておくことをおすすめします。

保育ママの開業までに準備すること

保育ママとして開業するまでには、準備する項目が複数あります。その中でも、とくに重要な準備が以下の3つの項目です。

  • 大規模保育施設での実務経験
  • 設備の整備と開業資金
  • 確定申告の知識
  • 関連資格の取得

保育ママの開業に必要以上に時間をとられないよう、それぞれの項目について解説していきます。

大規模保育施設での実務経験

保育ママは、当然ながら保育士としての仕事が業務の中心になります。安心で安全な保育を提供するためには、保育園や幼稚園で多くの子どもの保育を経験することが重要です。子どもだけでなく、多くの保護者と接していくことで、開業後の保護者対応も余裕をもっておこなえます。

自治体によっては資格取得後、すぐに保育ママとして働けるかもしれません。しかし、開業後は、子どもの体調変化や保護者からの要望に全て自分で対応する必要があります。保育施設で実務経験を積んで、子どもと保護者が安心できる保育を提供してみてください。

設備の整備と開業資金

自宅を利用して保育ママを開業する場合、自治体の条件を満たしつつ、子どもたちが安全で快適に過ごせる環境を作る必要があります。子どもがケガしないように、安全柵などの設置も必要です。

また、リフォームが必要な場合は、十分な資金が必要になります。自治体によっては開業資金の補助があるので、事前に相談して自己資金がどの程度必要になるか把握しておきましょう。

確定申告の知識

保育ママは個人事業主として開業するため、毎年の確定申告は避けては通れません。帳簿の付け方や決算書の作成方法など、税務に関する知識をしっかりと身につけることが必要です。

とくに、節税効果を狙って青色申告を選択する場合、複雑な帳簿の管理が求められます。個人事業主に特化した会計ソフトの利用や、税理士さんとの相談も考慮に入れてみてください。

関連資格の取得

保育ママとして保育を提供するうえで、関連資格の取得は大きなメリットになります。たとえば、家庭的保育のスペシャリストを目指すチャイルドマインダーや、保護者とのコミュニケーションに役立つ社会福祉士の資格などが取得対象になります。

保育に関連する資格を取得することで、より専門的な知識のもと質のいい保育を提供できるようになり、保護者からの信頼獲得にもつながるでしょう。保育ママの開業までに準備する項目は沢山ありますが、一つひとつ丁寧に対応してみてください。

保育ママの労働条件は?

保育ママを開業する際に気になるのが、労働条件です。保育ママの労働条件は、一般の保育園や幼稚園の保育士とは異なります。保育ママの開業を検討している保育士のために、保育ママの労働条件について詳しく解説していきます。

保育ママの収入

保育ママの収入は、以下のように構成されています。

  • 利用料
  • 自治体からの補助金
  • おむつ代など

東京福祉局が公開している、個人で営む保育ママの令和3年度の収支報告を紹介します。在籍児童3人の利用料が年間1,400,000円、補助金の合計は4,065,720円になります。その中から、給与として計上した金額は年間3,300,000円でした。施設によっては、紙おむつなどの必要な経費を別途徴収することがあります。

自治体からの補助金を受けることで、保育ママは十分な収入を得られることがわかります。保育ママで生計を立てられるかどうか、上記の収入例を参考にシミュレーションしてみてください。

引用:事業所名 保育ママきださんち – 【財務情報等の公表】

保育ママの定員

保育ママが保育できる子どもの人数は、通常2~3人程度です。ただし、保育者が2名以上いる場合は、最大で5人程度の子どもを保育できる場合もあります。保育ママを開業する場合、上記の定員を考慮して利用料を決定しましょう。

保育時間と休日

保育ママの主な保育時間は、8:00~18:00程度までとなっており、基本的に日中8時間の勤務になります。さらに、時間外保育をおこなうことも可能です。休日は基本的に日曜日や祝日が休日となり、自治体によっては年末年始や夏期休暇など特定の日にちも休日となる場合があります。

また、10~20日程度の有給休暇も取得可能です。有給休暇を取得する際は、施設そのものをお休みにすることが一般的です。施設をお休みにする際は、保護者に十分な説明をしてください。仕事を休めない場合、保護者は子どもを預ける場所を探さなくてはいけないためです。

保育ママの質問

保育ママは比較的新しい保育サービスなので、仕組みをよく理解していない保育士も少なくありません。そこで、保育ママの運営に関する質問を集めてみました。抱えている質問が該当する保育士は、これから紹介する回答を参考にしてみてください。

給食はどうしたらいいか?

保育ママが子どもたちに提供する給食については、各自治体のガイドラインや指針に従って準備します。保育ママの場合、基本的に保育は自宅でおこないます。そのため、家庭の食材や調理方法を活用して、栄養バランスの取れた食事の提供が求められるでしょう。

子どもに提供するメニューや食材の選び方などは、保健所や専門機関のアドバイスを受けることが推奨されています。安心で安全な給食を子ども達に提供できるような工夫が必要です。

保育ママに定年はあるのか?

保育ママには明確な定年は設けられていません。しかし、自治体によっては定年がある可能性があります。たとえば、東京都大田区では、保育ママとして開業できるのは25歳から62歳までの健康な方と定められています。

大田区は、あくまで一例に過ぎないため、具体的な年齢制限は各自治体のガイドラインや要件を確認する必要があります。

保育ママとベビーシッターは違うのか?

保育ママとベビーシッターは、保育の形態や対象となる子どもの年齢、保育場所などの違いがあります。ベビーシッターは、利用者の自宅に出向いて12歳までの子どもを対象に保育をおこないます。また、ベビーシッターは、開業、派遣会社に登録、マッチングサービスの利用が可能です。

まとめ

2010年度の児童福祉法の改正によって、自宅を保育所にして子どもの保育をおこなう保育ママ制度がはじまりました。開業するためには、各自治体が定めた条件を全て満たす必要があるため、時間と費用がかかるので注意してください。

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