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潜在保育士とは?復帰しない理由と厚生労働省の復帰支援を詳しく解説

保育士資格を持ちながらも、保育士として働いていない人を「潜在保育士」と呼びます。保育士不足が叫ばれている現代で、潜在保育士は重要な存在です。潜在保育士の中には、以前保育士として働いていたが、退職したという人もいます。

保育士資格を持ちながらも、保育現場に復帰しないのはどんな理由からなのでしょうか。そこには復帰したくてもなかなかできないという深刻な理由もあるようです。そこで本記事では、潜在保育士が復帰しない理由、厚生労働省や自治体などが行っている復帰支援について解説します。

潜在保育士とは

潜在保育士は「保育士資格を持ちながらも、保育士として働いていない人」のことです。潜在保育士は保育士経験の有無により、2つのタイプに分けられます。

  1. 保育士資格を取得後、一度は保育士として働いた後に退職し、現在は保育現場から離れている人
  2. 保育士資格を取得後、一度も保育士として働いたことのない人

保育士として一度も働いたことのない人も、保育士資格を持っていれば「潜在保育士」と呼ばれます。

潜在保育士の数

厚生労働省の調査では、2018年において潜在保育士は95万人程度とされています。保育士登録者数154万人に対して、保育士として働く人は59万人でした。つまり、保育士資格をもっている半数以上が潜在保育士と言えます。その中には、一度は保育士として働いていたものの、退職したという人もいます。

参考:厚生労働省「保育士の現状と主な取組」

保育士を退職した主な理由

常勤保育士の離職率は9.3%というデータがあります。なぜ退職してしまう人が多いのでしょうか。令和元年に行った東京都の調査からは次のような理由が報告されています。

引用:厚生労働省 保育士の現状と主な取組

退職の理由はさまざまありますが、退職理由として多かった次の3つについて詳しく解説していきます。

  • 職場の人間関係
  • 給料が安い
  • 仕事量が多い

職場の人間関係

保育士に限ったことではありませんが、多くの人が職場の人間関係に悩み、退職の一因となっています。特に保育園という職場は、女性が圧倒的に多い場合がほとんどで、女性同士の職場独特の課題もあるようです。

また、保育士は通常同じクラスを複数人で担当します。同じクラスを担当する同僚とは、ほぼ1日中一緒に過ごさなければなりません。同じクラスの担当同士の相性が合わない場合、職場の雰囲気が悪くなり、退職の要因になることもあるようです。

給料が安い

保育士の給与は、他の職種よりも年収が低いと言われています。保育士の給与の低さについては、これまで多くのメディアでも取り上げられているので、耳にしたことのある人もいるでしょう。

平均的な保育士の年収は330万円程度です。これは、他の職種の平均年収が500万円程度であることと比較すると、明らかに低い水準と言えます。経験を積んでいくことで給与が上がる可能性はありますが、同時に業務の負担も増えて責任も増大します。労働時間や仕事内容を考慮すると、報酬が負担に見合っていないと感じる人が多いでしょう。

参考:厚生労働省 保育士の平均賃金

仕事量が多い

保育士の仕事量は多く、体力的にも精神的にも辛いと感じる人が多いようです。保育士の仕事は主に子どもの保育ですが、それだけではありません。書類の作成や壁面飾り、保護者対応など多岐にわたります。

最近ではICTや独自の保育プログラムなどに取り組む保育園も多く、仕事内容が多様化していると言えます。また、アレルギー対応や保護者対応など、精神的に負担のかかる仕事も少なくありません。通常の勤務時間内に終わらないこともあり、持ち帰りをする人もいるようです。

潜在保育士が復帰しない主な理由

潜在保育士の中には、保育士として復帰したいと考えている人もいます。それなのに潜在保育士が多いのはどうしてでしょうか。そこには、保育士として復帰する際のさまざまな不安があるようです。厚生労働省が行った調査では、次のような不安要素があることが明らかになりました。

参考:厚生労働省 潜在保育士ガイドブック

復帰する際の不安にはさまざまなものがありますが、特に不安を感じるとされた次の3つについて詳しく解説します。

  • 家庭との両立が不安
  • 自身の健康や体力が不安
  • 再就職できるか不安

家庭との両立が不安

家庭との両立ができるかどうかを不安に感じる人が最も多いようです。潜在保育士に配偶者と子どもがいる割合は7割とされています。自身も子育て中で時間に余裕がないという人も多いのでしょう。

保育園で勤務するとなれば、朝7時台に出勤することもあります。退勤も19時以降になり、持ち帰り仕事もあるかもしれません。特に小さい子どもをもつ人は、家庭との両立が困難だと感じるでしょう。

自身の健康や体力が不安

保育士の仕事は、子どもを抱っこしたり一緒に遊んだりと、体を使う仕事が大半です。潜在保育士の中には40代や50代の人も多く、健康や体力に不安を感じる人がいるようです。

保育士は乳幼児を抱っこやおんぶしたり、子どもたちとコミュニケーションの中で身をかがめる姿勢をよくとったります。保育園の設備が子どもたちに合わせて低く設計されていることからも、これらが腰や膝への負担となります。健康や体力に不安を感じ、復職に踏み切れない人も多いようです。

最新の技能や知識が備わっているか不安

保育現場は日々変わっています。保育士としてのブランクがあればあるほど、知識や技能に不安を感じる人も多いようです。最近ではICTを取り入れたり独自の保育プログラムを行ったりと、多くの取組が行われています。また、アレルギー対応や保護者対応なども難しくなっており、自身の知識や技能で対応できるか不安に感じるのでしょう。

潜在保育士が求める主な復帰条件

潜在保育士が復帰を決める際、どのような条件が求められるのでしょうか。令和元年に行った東京都の調査からは、次のような再就業する場合の希望条件が報告されています。

引用:厚生労働省 保育士の現状と主な取組

通勤時間や勤務日数・勤務時間などの勤務体制に対する希望が最も多く求められていました。その他にも求められる条件はさまざまありますが、希望条件として多かった次の3つについて詳しく解説していきます。

  • 勤務体制
  • 給与
  • 雇用形態

勤務体制

希望条件として勤務体制をあげる人が最も多くいました。これは、復職不安の「家庭との両立」に関わっていると考えられます。家庭との両立を考えた際に、職場と家が近いことを希望する人が多いようです。なるべく余計な時間を割きたくないという思いから、通勤時間を希望条件として考えるのでしょう。

勤務日数と勤務時間も同様に、家庭との両立を考えた際に重要なポイントとなります。子どもがいる場合、土日の勤務が多ければ子どもの面倒を見る人をどうするか考えなくてはいけません。勤務時間についても、早朝勤務や夜遅くまでの勤務が難しいという人もいるでしょう。

給与

給与の低さは退職理由でも上位にあがったように、保育士の大きな問題と言えます。資格を必要とする専門職としては低く感じたり、他の職種と比較して安いと感じたりする人が多いようです。最近では他の職種のアルバイトやパートの賃金が上がる傾向にあります。保育士と他の職種を検討する際には、給与は大きな判断材料となるでしょう。

雇用形態

厚生労働省の調査では、パートタイムとして働きたいという人が6割という結果があります。20代ではフルタイムを希望している人が多い一方で、年齢が上がるにつれてパートタイムを希望している人が多くいます。常勤での雇用となると、早番や遅番などがネックになっているようです。

参考:厚生労働省 潜在保育士ガイドブック

厚生労働省の潜在保育士への復帰支援

厚生労働省では、潜在保育士が復帰するためのさまざまな支援を行っています。厚生労働省が行っている取組を3つご紹介します。

  • 保育士・保育所支援センターの拡充
  • 潜在保育士再就職支援事業
  • 就職準備金貸付事業

保育士・保育所支援センターの拡充

保育士・保育所支援センターとは、潜在保育士の支援や保育園への就職支援を行うものです。保育士・保育所支援センターは、各都道府県に設けられています。潜在保育士を見つけ出し、保育園などでの就業を希望する人に対して、就職相談や適切な保育園とのマッチングを支援するサービスを提供しています。センターを利用することで、自身のスキルと意向に合致した保育園への就職に結び付けられるでしょう。

潜在保育士再就職支援事業

長いブランクによる潜在保育士の職場復帰への不安を軽減するため、保育所等が潜在保育士を非常勤として試行的に雇用する際に行う研修等に要する費用を補助しています。これにより、保育所はブランクのある潜在保育士を雇用しやすくなります。

就職準備金貸付事業

潜在保育士が再び保育士として復職するための準備資金の貸付を行っています。2016年より上限が20万円から40万円に引き上げられました。

各自治体の潜在保育士への復帰支援

各自治体でも、潜在保育士への復帰支援を行っています。自治体ごとに内容は違いますが、多くの自治体で行われている3つの取組をご紹介します。

  • 就職支援研修・就職相談会
  • 就職支援セミナー
  • 必要な資金のサポート

就職支援研修・就職相談会

保育士の就職支援に向けた研修会と相談会では、就職相談や求人情報などを提供しています。保育士資格をもつ専門のコーディネーターによる就職相談を行っている自治体もあります。地域の求人情報を得ることができるので、復職する際の大きな手助けとなるでしょう。

就職支援セミナー

就職支援セミナーでは、保育に関わるさまざまな内容を学べます。保育所保育指針や最近の保育事情など、幅広い内容が用意されています。セミナーの内容は講義だけではありません。施設見学や職場体験などを行っているところもあります。

現役保育士や園長などが講師を務めることもあり、最新の保育を学べます。より現場に近い内容を学ぶことで、スムーズな復職をサポートしてくれるでしょう。

必要な資金のサポート

自治体によって内容は異なりますが、保育士に復職の際に必要な資金のサポートを受けられます。東京都の例をご紹介します。

資金の種類資金の内容貸付額
再就職支援資金就職に伴う引越し費用や通勤自転車の購入など、就職に向けた準備に必要な資金40万円以内※1人1回限り
保育所復帰支援資金就学前の子どもを保育園等に預けた場合の保育料の一部保育料の半額月額27,000円以内※最長1年間
子どもの預かり支援資金就学前の子どもを早朝や夜間預けた(ベビーシッター等)場合の利用料の一部利用料金の半額年額123,000円以内※最長2年間

参照:東京都福祉局 おかえり保育士 -保育士の復職応援ガイドブック-

保育士に復職するには

保育士に復職するには、国や自治体のサポート以外でも利用できるサービスや方法があります。

保育士専門の転職サービスを利用する

近年、保育士の需要が急増しており、多くの転職サービスが保育士専門のサポートを提供しています。これらのサービスは、保育士の求職活動に特化しており、求人情報が豊富です。

保育園の待遇や職場の雰囲気など、詳細な情報を提供してくれるので、自分に合った職場を見つけやすくなるでしょう。

また、多くの転職サービスでは、専任の転職アドバイザーが就職活動をサポートしてくれます。履歴書や職務経験の作成アドバイス、面接対策など幅広いサポートがあります。特に、ブランクのある潜在保育士にとって、細やかなサポートは心強いでしょう。

さらに、転職サービスの中には、一般には公開されていない求人など、他では得られない情報を入手できる場合もあります。

希望の保育園を見学する

就職先を検討する際には、希望する保育園を見学するのもいいでしょう。見学を通じて、保育園の実際の雰囲気や子どもたちの様子、職員の対応など現場の様子がよくわかります。保育園を見学することで、施設の設備や環境が確認できるだけでなく、自分が働く姿を具体的にイメージできるでしょう。

また、保育士や園長と実際に話すことで、保育園の方針や求められる役割、待遇などの細かな情報を入手できます。ブランクのある潜在保育士にとって、現場を見ることは再就職への不安を取り除き、自信を高める手助けとなるでしょう。見学したことを元に、自身のスキルや経験をどう生かせるか、どのような準備が必要かを具体的に考えるきっかけにもなります。

まとめ

ここまで潜在保育士が復帰しない理由や、厚生労働省や自治体が行う復職支援などについてご紹介しました。復帰に不安を抱える人も、適切な支援を受けることで不安解消につながるでしょう。

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